うちこのヨガ日記

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私何だか死なないような気がするんですよ 心とからだについての282の知恵 宇野千代 著

宇野千代さんが98歳のときに残された健康ノウハウの格言が詰まった本。友人宅の本棚にあるのを読み出したら止まらなくなり、お言葉に甘えていただいてきました。中村天風さんの話も出てきます。ボディのほうは半分くらい天風節じゃないかと思う勢いです。
宇野千代さんのストレスの定義はシンプルです。

 ストレスの少ない暮らし方をしたいと思うのでしたら、自分のまわりの人に対して、あまり多くの事を期待しなければいいのです。他人が、自分の思う通りに動いてくれない時に生れるのがストレスだからです。

(体をなげ出して、無心に従うと思いがけなく楽しくなるものです より)

 わたしは宇野千代さんの自我の扱いにとても惹かれてきました。これまで、完全に心をつかまれてきました。それが「おはん」を読んでからエッセイの中の言葉の響き方がガラリと変わりました。もともと文才がとんでもなくある人が、噛み砕いて話してくれている一部なのだと思うようになりました。


そして「悪徳もまた」を読んでからは、我慢のしかた(=感情の殺しかた)がおそろしく感じるようになりました。このエッセイにも、子どもの頃の経験が書かれていました。

 動かしがたいものに対しては従順に従うという私の習性は、どうも父親から来ているように思うのです。私の父親は、生涯定職をもたずに、自分のやりたいことだけをやって死んだ無頼の男でした。子どもたちは父親の命令には絶対服従で、どんな言いつけでも「はい」と答えて、すぐに立ち上がるのです。今では信じられないような事ですが、この幼児の習慣が、今も私の性格の底深くに沈んでいるように思います。私はあの苛酷であった子供時代のお陰で、叩いても死なないような、頑健そのものの体と心を与えられました。
(体をなげ出して、無心に従うと思いがけなく楽しくなるものです より)

本家からの仕送りで生きるニートで暴力的なお父さんを16歳の頃に亡くされている宇野千代さん。継母で当時30歳くらいのリュウさんが、50代後半の暴力的な男性の相手をしていた。どうにも美談にはできないおそろしさがあります。「悪徳もまた」では継母は7歳年上とあったけれど、実際は15歳くらい年上だったようです。だとしても、かなりきつい話。

この時代の女性の壮絶さと忍耐強さはすごすぎて、メンタル面の教えはいま参考にするにはマゾすぎる。ポリアンナ症候群にも見え、自分を大切にするということがわからなくなってきます。小説家・宇野千代の技量を知ってしまうまでは、こんなこと思わずに読めたのだけどな…。
西原理恵子さんの本にもたまに似たものを感じるのですが、根がマッチョすぎる。おしゃれと美容と身体の健康のところだけ参考にしようと思います。

 

 

宇野千代さんのほかの本の感想はここにまとめています