うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

はじめての能を矢来能楽堂で観てきた(東京都新宿区神楽坂)

先日、ヨガ仲間が舞うというので能を見てきました。どきどきしました。
なんとも発見の多い時間でした。ここ数ヶ月で行った場所や読んだ本とリンクすることがたくさんありました。
なにも知らないわたしは事前に「お面かぶってるんですよね? どの人かわかるかな…。どこに座れば見えますか?」という間抜けな質問をし、「顔まるだしです」といわれて「顔出しもあるんだ…」というくらい予備知識ゼロで行きました。


一緒に行った人が歩きながらあらすじを話してくれました。それを聞きながら「それゾンビの話ってこと?」「そうみたい…」と、これまた伝統芸能知らずのわたしたち。3分ほどの演目でしたが、知っている人が衣装を着て古い日本語をマントラのように話し舞う姿はとてもすてきで、地団太のようなステップを踏まれるたびにこちらもシャキッとしつつ、「でもゾンビなんだよね?」という思いをぐるぐるさせながら観ました。能では修羅物というそうで、まさに夏に観てきた月岡芳年の世界
あとで舞っていたご本人に廊下でお会いしたら顔がマットな感じのメイクで(口の色もあまりない感じ)、ヨガでアクティブな動きとお顔しか拝見していないかたの鎮魂的な勇姿はかなり新鮮でした。会場には着物の人がたくさん居て、みなさんグレイスフル! 雑誌の中の世界かと思いました。 

f:id:uchikoyoga:20181126172417j:plain
f:id:uchikoyoga:20181126172412j:plain

矢来音楽堂はふつうに民家の中にあり、中は別世界

 

グレイ・ヘア×ウディヤーナ・バンダのクールネス

いくつか観た演目の中に「殺生石」というのがあり、グレイ・ヘアのすてきなおばさまが舞っておられました。後半は弓を射るようなしぐさがアルジュナのよう。ジャンプして半回転して着地するような動きもあり、あの上品なおばさまのヘソの奥にすごいウディヤーナ・バンダがあるのかと思うと練習へのモチベーションがいっきにあがりました。後で調べたら少し前に行ってきた那須の殺生石の話でした。性格が悪くいまもガスを出し続けている狐の話としか記憶していなかったので、ものすごくイメージが変わりました。
なんというか、能の世界はバンダの利いた素敵なおばさま祭りといっていいくらい、けっこういろいろモチベーションが上がりました。一緒に行った人(わたしよりヤング女子)は着物と個性的なショート・グレイヘアの着こなしで見逃せない人がいたようで「受付の人、パンクでしたねー!!!」「あ、やっぱり。わたしも見てた!」と帰りにニヤニヤしました。想像以上に自由でかっこいい世界。

 

素謡のトーンにいろいろな記憶が引き出される

素謡(すうたい)という、メインボーカル・トリオ+バックコーラスのような構成で行われる朗読の歌のようなものもいくつか聴いてきました。
ゆっくりなので話を追うために書き取りしながら聴きたい感じでしたが、ときどき解説のようなかたが歌うときは「候文」になったりして(ギーターでいうとサンジャヤのパートかな)、昔の人はこういう文章を書いていたんだよな…と思いながら聴きました。谷崎潤一郎の「文章読本」にそんなことが書いてあったのでした。
歌の部分はギーターのように節の数が統一されていないので、ときどき音のアップダウンだけに意識が向く瞬間がありました。このときに不思議な感覚が起こりました。週末に銀座ですれ違う街宣カーのあの独特の語調と少し似た瞬間がサブリミナル的にある。イントネーションにも香りと同じように潜在記憶や潜在印象のようなものが「なつかしみ」としてあって、ナショナリティというのはこういう微細なものの積み重ねでできているのかもしれない。ふと、そんなことを思いました。


わたしはいわゆる「お稽古世界」に偏見を持っていたな。能には来年からのわたしのヨガの練習テーマともリンクすることがあり、とてもすばらしい世界を見ることができました。あらゆる修練物は結局バンダじゃな、と思いながら帰って来ました。

 

20年ぶりに、ゆっくり神楽坂を歩いたら…

わたしは20年前に神楽坂へよく仕事で行っていたのですが、その後チェーン店ばかりになった記憶がありました。が、いままたすごく楽しくなっていました。
あんみつの「紀の善」は相変わらずものすごい行列で、一緒にいたヤング女子に「わたしがここに来ていた頃は、中山ミポリンがドラマのなかでここに来てね、相手はたしかトヨエツで…」とか「ここの中華まんの五目のやつ、たけのこ入ってるやつが超絶おいしい」とか記憶が芋ずる式に出てきて自分でも驚きました。ミポリンて! なにいうとるのわし。

f:id:uchikoyoga:20181126172408j:plain

コボちゃん像なんてのもありました。このリアル子ども感、やばい。かわいい…

東京を観光するかたに、神楽坂はたいへんおすすめです。