うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

危ないお仕事 北尾トロ 著


わたしは北尾トロさんの本をきっかけに傍聴へいくようになり、ここには書かないけど相変わらず行っており、それが哲学の勉強の題材になったりしています。
北尾トロさんの書き方は「どうですか。知らなかったでしょう」だけじゃない。「やってみて、知った。そりゃ、そういうこともあるだろう。なぜならそこに市場があるから」というスタンス。だから、ためになる。

たとえば浮気調査の実態を伝える章では、

サラリーマンやOLを尾行するには顔や髪型、服装をアテにすると失敗の原因になるそうだ。プロは男だったら肩、女だったら足首を見ながら尾行する。こうすれば混雑時でも見失う確率が少なく、男は髪型やスーツの柄、シャツの柄、カラダのシルエットまで記憶でき、女は靴の形状、脚のライン、歩き方が目に焼きつくうえに、振り向かれても目が合う危険がない。

具体的でためになる。



超能力開発セミナー体験でも

先生の話は、よく考えると疑問だらけだ。まだまだ修行中の身とケンソンしたかと思うと、こんな強気な発言が飛び出してくる。
「私はチャネリングもヒーリングも自在にできる。神とも話しました。あのサイババとはよく交信もしていますね」
 サイババと交信できるのに何度もインドまででかける不思議。

冷静。すてき☆



月収100万円のメルマガ・ライターを見ても

感心するのは、自分が書いた原稿に対しての的確な距離感だ。雑学ネタで大事なのはネタであって文章力ではない。その分は、広告効果を気にせず発行する日記メルマガなどに注ぎ込めばいい。そのあたりの割り切りがはっきりしている。

「プロとは」という視点で観察するポイントをはずさない。



その業界特有の仕様検討基準も、ちゃんと伝えてくれる。
ダッチワイフ製造業者のレポートでは

長女のさちこは年齢16歳で身長152、バスト80A、ウエスト56、ヒップ80。こういう設定を選んだのには理由がある。
 最初、いわゆるムチムチプリンのグラマータイプかスリムタイプかで意見が分かれた。いざやるとなったらオッパイなんかデカいほうがいいと主張する人間もいたが、人形師・島津氏は冷静に言った。
「よく考えてみろ。後々の運送コストのこと、材料を食うことを考えたら、なるべく細身でちっちゃいのがいい」
 さすがは経営者だ。受け取る人も、実はこのほうがいいのだ。送られてきた荷物が大きいと目立ってしまう。なにせ、さちこは空気注入式ではないのだから。
 現物を見ると、人間が入っているとは思えないサイズ。誰もワイフとは思うまい。

女性の視点からすると、べつに大きくて重い荷物でもワイフとは思わないっしょ、思うのだけど、こういう性質の検討プロセスってどの業界でもあるもの。本能的な性の解放の前に、社会的にセーフじゃないと。うん、うん。



このダッチワイフ製造業者さんのコメントも、なんか沁みた。

「買うのは20代で親と一緒に住んでいる人が多い。ロリコンは他人に言えないし、治らないのだとすれば深刻ですよ。反社会的なモノを作ってしまったかなとも思うけど、客の声を聞くかぎりは逆に犯罪防止に役立っているんじゃないかと。そう考えるようにしています」

なんかこれも、わかるんだよなぁ。余剰エネルギーの排出という点で。


性産業系の案件は読んでいて気持ち悪くなる女性もいるかもしれないけど、わたしは「きれいなものだけ見ていたい」という気持ちに潜む暴力性によく罪悪感を感じるので、こういう本を読むと気持ちが安定します。


▼紙の本

危ないお仕事! (新潮文庫)
北尾 トロ
新潮社


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