うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ふたたびの虹 柴田よしき 著


これもブクブク交換でのいただきもの。汐留のOLさんからのおすすめ本。読んでいてすごくいい気持ちになりました。
季節感ある・泣ける・ミステリー・飲みに行きたくなる・恋したくなる の5拍子が揃っており、読後感のよさがたまらない。
東京丸の内の片隅にある小料理屋の女将が、料理したり事件を解決したり。登場人物それぞれの秘めた思い、秘めた過去、現在への向き合い方が素敵。


沁みる会話も多い。
これは骨董屋さんの清水さんと女将の会話。

(子供が毒を盛られた事件の警察の捜査について、母親が容疑者になっていることを話す場面)

「母親が二歳の子を残して家を出てしまったってことが、警察の常識からすると理解出来ないみたいなんだ。母親が子供を置いて家を出るってことがね」
「そういうことは」
 女将は唇を湿らせ、そして囁いた。
「ありえることなのよ……どうして世間の常識って、どんなにぎりぎりになっても母親の背中に子供をおぶわせようとするのかしら……もし子供と一緒なら……ふたりとも死ぬしかない、そんなふうに考える瞬間だって……あるってこと、どうしてわかってあげようとしないのかしら……」
「日本の場合には、子供を捨てて家を出る女よりも子供を背負って電車に飛び込む女の方が同情されるからね。外国なら、どんな事情があっても子供を殺す親は悪魔だと見なされる。殺すくらいならなぜ捨てないんだ、そう言われるのにね」

まえに「殺人事件の57%は家族」という話を聞いた(参考)ときに、日本独特の恥の文化のようなものを思った。この小説にもこんな会話が出てきて釘付けになった。



この女将のたどりついている境地がすごい。最終話には、こんな脳内語りが出てくる。

もう幻はいらない、と思った。これからの人生はひとつひとつ、確かなものだけ掌におさめて生きよう。それがどんなに少なくても、掌に入りきれるものを愛しんで、おだやかな夜を迎える日々を過ごしたい。

さらに終盤は、40歳くらいの設定の女将の脳内語りがいちいち沁みる。

客に合わせ、流れに任せ、背伸びをせずに穏やかに。それが、今のわたしに出来ること。

「幻だと思っていたものが時を経て流れ去っていく」というのを見送る機会が増えると、一時的に派手に打ち出されているものも遠目で見るようになる。世の中全体をそういう目線で見るようになってしまい、自分の中で消えかけている火のようなものをどうしたものかと思っていたのだけど、たまにそっと掌で風をよけて小さく復活させればいいんだ、と思った。



こんなお店があったら週に2回くらい通うだろうな。甘えすぎない程度に、それ以上は行かないように気をつけたりしながら。


この本をすすめてくれた女性(ちなみにヨガはLAVAでやってるそうです)に感謝。
わたしは小料理屋はできないけれど、この女将のお店のようなヨガの場をつくっていきたいわ。と、ぼんやり思ったりしました。


ふたたびの虹 (祥伝社文庫)
柴田 よしき
祥伝社
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