うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

密教ヨーガ 本山博 著 / 第二編より「ナディ」

以前ご紹介した「密教ヨーガ ― タントラヨーガの本質と秘法」の第二編「チャクラ、ナディに関する教説」の中から、今日はナディに関する記述部分をいくつかご紹介します。
本山博氏といえばサラ・パワーズさんのDVDにもクレジット紹介されていましたが、昨今では「陰ヨガの参照先」のような方。早くからインド・ヨーガのナディ&中国医学・経絡の関係について探求されていました。

<138ページ ナディとは何か より>
 ナディには粗大なものと微細なものがある、という説には私も賛成ですが、ナディは、針灸医学でいう経絡にあたるもののようにも思われます。

この頃の言い切りはまだまろやか。


<156ページ 小五風について より>
(前の項で五風・プラナ、アパーナ、ヴァーナ、サマーナ、ウダーナについて述べた後)
 以上の五風のほかに、小五風(upa pranas)と呼ばれる、主たる五風に対して補足的な役割をする五風があります。ナーガ、クールマ、クリカラ、デーヴァダッタ、ダナンジャの五つです。
 他のウパニシャット、ヨーガの教典などでは、小五風の存在する位置がはっきりしませんが、シュリ・ジャーバーラ・ダルシャナ・ウパニシャットによると、小五風はそれぞれに、身体の各部の皮膚、骨などに存在するといわれます。その働きは、次のようです。
 ナーガは、唾をしたり、シャックリをするのをコントロールし、クールマは、眼を開き、また目ばたきすることをコントロールします。クリカラは、クシャミをおこさせ、飢えを生じさせます。デーヴァダッタは、欠伸や睡眠をつかさどります。ダナンシャは全身に満ちて、死者をも去らないといわれます。たとえば、身体の皮膚全体に存在し、死体にあってもなお存在しているので、死語数ヶ月たっても毛髪がはえてくるなどという現象は、ダナンジャの働きによると考えられるのでしょう。

(中略)

どのナディが、喉頭と横隔膜の間の領域に生気を送るのか、どのナディがヘソより下の領域に生気を送るのかなどについては、ほとんど記述がないのです。
 これに対し、中国医学の経絡説では、心経は、他の身体の部分にもエネルギーを送るが、主として心臓に気(エネルギー)を送り、その働きをコントロールし、また胃経は主として胃にエネルギーを送り、その働きをコントロールする、というように、各経絡と、各臓器、組織の関係が明瞭です。将来、五風とナディ、各臓器、組織との関係が追求されていくと、経絡と臓器の関係に一致することがしだいに解明されてくるかもしれません。

「ヨーガ・スートラ」以降のヨーガ学派によるウパニシャッドの教えで言及され始めたようです。いっぽう経絡について歴史を探ってみるとB.C.約2000年〜 B.C.約250頃からあったという記述があります。B.C.約2000年となれば、リグ・ヴェーダより800年も前。


<157ページ 五風と三焦 より>
 ヨーガでいう五風に対応するものが、針灸医学にあるのでしょうか。私は三焦がそれに対応すると思います。三焦とは、上焦、中焦、下焦の三つのことで、焦というのは熱、つまりエネルギーのこと、気のことです。それで三焦のことを三気ともいうのです。
 上焦は、胸廓以上、つまり横隔膜より上に位置して、その働きは肺の呼吸作用、心臓の血液循環作用のコントロールです。したがって、上焦の位置と作用は、五風のプラナに相応します。
 中焦は、横隔膜とヘソとの間に位置し、胃、脾臓膵臓、肝臓、胆の消化液分泌作用、消化作用、吸収作用をコントロールします。これは、サマーナに相応します。
 下焦は、ヘソ以下に位置し、大小腸、腎、膀胱、生殖器の機能をコントロールし、大小便の排泄作用をつかさどります。これは、アパーナに相応します。

子どもの頃、うんちがでなくてつらいときに母が「下焦」を押してくれたことを思い出しました。


<168ページ ナディ(イダ、ピンガラ、スシュムナ)について より>
 ナディは、英語でよく神経と訳されますが、これは、間違っているとサッチァナンダはいっています。ナディは神経ではありません。
 ナディ(nadi)は「流れる」という意味の語源のナド(nad)から派生したもので、流れのための器官(たとえば血管のようなもの)ではなく、流れそのものを意味するものです。

(中略)

彼の考えによれば、流れている非物質的なものがナディなのです。そのナディを通じて、心霊的意識が流れています。

(中略)

イダ、ピンガラ、スシュムナの三つのナディはもっとも重要で、ムーラダーラチャクラから端を発しています。
 イダは、ムーラダーラの左から、ピンガラは右から、スシュムナは中央から発せられます。スシュムナの内側には、より微細なチトラナディがあり、さらにその内側にはもっとも微細なブラフマナディが流れています。したがって、スシュムナはほかの二つの意識の流れの容器ともいえます。

(中略)

 イダは心的、霊的な働きをコントロールし、ピンガラはプラナ、身体的働きをコントロールします。ピンガラとイダとは、心的エネルギーと身体的エネルギーとの間にバランスを保つために、各瞬間ごとに各チャクラで交差しなければなりません。このようにして、心身の活動にバランスが保たれるのです。

「ナディは流れそのものを意味する」というのは、「これはこれ」「あれはあれ」とメソッド化したがる世界では腹落ちしにくいと思うのですが、感覚的にものすごくわかりやすいです。動いているときにだけ感じられるもの、もしくは感じられるときにだけ動きをキャッチできるような、そんな感じがするから。
いちばん身近で感じやすいのは、やっぱり片鼻(方鼻)呼吸だと思う。



これを読んで、小五風にとっても興味がわいてしまいました。シャックリとあくびのコントロールはサラリーマンの必携スキルだから。

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