とても多くのことを考えさせられる本です。これは、インドで起きた出来事。
当時は真実味を問われる内容だったためか、こと細かにその状況を裏付ける注釈があるのですが、この事実は多方面の研究に影響を与えたことがよくわかります。四つ足歩行だけでなく、野生で育つ目の特性、嗅覚の発達(動物の生肉への反応)、遺伝のこと、感情のこと、いろいろです。
この本を通して感じたことは書ききれませんが、やはり人間として性格と思考、感情の多くは「育ち」によること。読み進めながら何度も、自分の親からどんな影響を与えられたかを振り返りました。
そしてもうひとつ、これは非常に残念でならず、想像すると胸がギュッとなるのですが「育てた母狼」のこと。母狼は、このカマラとアマラを保護する際に射殺されてしまったのですが、排便では娘たちの便をほかの子狼にするように舐めてやり、食物を与えていたなどの習慣が推測されています。明らかに自分の種族とは違う生き物を、上の子は推定八歳まで。下の子は推定1歳くらいで保護されたのですが、捨てた親元は同じである確率のほうが低く(当時この地域では捨て子が多かった)、二人目の子をまた同じように育てているのです。
この本は、ペットを飼っている人が読むとまた思うこともいろいろだと思うのですが、生き物が生き物に与える愛情について深く考えずにはいられず、そんななか、いま身近で起きている人間界のさまざまな事件やトラブル、また個人の中で起きるさまざまな感情がもたらすことを思うと、ある状況と環境に順応して生きることのできる人間という生き物の持つ本来の強さをもっと実感して生きていかなければいけないな、と思います。
この母狼のように、目の前にある状況を受け止め、与えられる愛情を与える強さには、「尊敬」という言葉しか思い浮かばないのが悲しいくらい、見習うべき、学ぶべきことの多い一冊でした。
福村出版
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