あらすじの文章はまったく嘘でも間違いでもないのだけど、観たあとにモヤっとする映画でした。
この映画は2月に「国立映画アーカイブ」の小ホールで上映があり、そこで観ました。銀座の近くにある昔の映画を上映している建物で、なんとなくチラシを見て、たまたま観ました。
これがわたしにとって初めての「ひばりちゃん映画」で、以前紹介した『ひばりの子守唄』よりも先にこの映画を観ました。
── で、どうだったか。
要素が多く、でもわかりやすく、重くはない。
なのにメッセージ性は妙にある。
奇跡のような気持ち悪さ。
この映画は「日本の女性映画人」という特集の中で上映されていて、橋田壽賀子さんが松竹シナリオ研究所から松竹脚本部へ入り、大船調のホームドラマ路線の中での模索期を経たと解説チラシに説明がありました。
よくわからない説明です。
わたしは映画に詳しくありません。
素人の感想をもう一度言わせてください。
奇跡のような気持ち悪さ
この映画の主演は小さな女王・美空ひばりで "歌うひばりちゃん映画" なのだけど、彼女は三姉妹の末っ子の役。筋書きは津島恵子さん演じる長女の結婚話を中心に進んでいきます。
この長女の状況が小津映画の紀子シリーズと少し似ていて(台所を引きで映すアングルにオマージュ感あり)、父親役はもちろん笠智衆さんです。
長女はジャケットをかっこよく着こなし、建設会社で仕事を得てこれからますます働きたい!というモードで休日出勤までしています。
それに加えて周辺のキャラクターもいちいち完成されているのですが、序盤で展開される働きたい女性の描きかたが鮮やかで
わかりやすすぎ!
と、最初の30分でお腹いっぱい。
このドラマはホーム・コメディで100分くらいの映画です。
そこから突然 ”家族って、姉妹って、こういうむずかしいとこあるよね・・・” という要素が織り込まれ、その重みをずっと置きっぱなしにしたまま、ひばりちゃんが歌いまくります。
ちょっと文章では説明しにくいので、図というか、絵にしました。
家族の誕生日のディナーの場面です。
ここは帝国ホテルかと思うレベルで歌い上げたあと、「さ、次はお姉さんの番♪」とひばりちゃんがかわいく長女に話しかけにくるのですが、これがなかなかの地獄絵図。
ストーリー全般、長女役・津島恵子さんの負担が重すぎです。
久しぶりに感情が混沌としました。
ネットに感想をあげている人っていないものかしらと検索したら、Filmarksという映画のレビューサイトに、わたしの重荷を降ろしてくれるコメントを見つけました。
それ!!!!!
と思いました。
インターネットばんざい。ありがとうインターネット。
思春期の少女の揺れ動きを演じながら、歌うときだけは声も仕草も目線の配り方も完璧でこわい。少女の着ぐるみに入っている女王・美空ひばりにしか見えません。
“天真爛漫な少女” と “絶対少女じゃないだろ!” がコロコロ入れ替わり、観ているほうが情緒不安定になります。
橋田壽賀子先生の家族の描きかたの容赦なさに、お嬢の歌唱力が掛け合わさって、ファミリードラマなのに『羊たちの沈黙』を観た後みたいな気持ち。
メンタルが強くないと観られない映画でした。
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