うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

貨幣 太宰治 著


これはお見事。貨幣を女性名詞であるという設定で、擬人化して語られるカルマ・ヨーガ。
「わたしは媒介として身を任せるだけ」である貨幣が語る。世にモノを擬人化した話はたくさんあるけれど、このリズムから想起するのは「ナイト・ライダー」。
両者は全く別物です。まったく別物なのですが、彼女(貨幣)にも彼(キット・車)にもブッディ(理性)がある。

貨幣は語ります。

この世の中のひとりでも不幸な人のいる限り、自分も幸福にはなれないと思う事こそ、本当の人間らしい感情でしょうに、自分だけ、あるいは自分の家だけの束の間の安楽を得るために、隣人を罵り、あざむき、押し倒し、(いいえ、あなただって、いちどはそれをなさいました。無意識でなさって、ご自身それに気がつかないなんてのは、さらに怒るべき事です。恥じて下さい。人間ならば恥じて下さい。恥じるというのは人間だけにある感情ですから)まるでもう地獄の亡者がつかみ合いの喧嘩をしているような滑稽で悲惨な図ばかり見せつけられてまいりました。

カッコの中が、グサグサきますね。この女性口調でなじられるのがたまらない。恥じる恥じる。


ラストもうまい。これは、うなります。名作です。



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太宰治 貨幣 - 青空文庫


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貨幣
貨幣
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(2012-09-27)


▼もうこういうの、ホントやめて欲しいのよね!