産調出版から出ている入門書。呼吸法、浄化法、瞑想、食事のメソッドまで幅広く網羅されています。アーサナの最後に行うシャバーサナの手順が丁寧に説明されているのがよいです。瞑想の説明に、静かなのに鮮やかな表現がいくつもありました。
わたしはこの本を読むまで、1935年にディヴァインライフ・ソサエティでヨーガの教えが女性に開放され、それがイギリス統治下にあった当時は勇気ある行動であった、ということを知りませんでした。当時は、そういうムードだったのですね。
いわゆる「女行者」はいたとしても、組織として開放したものとして機能するようになったのがこの時代ということです。
いくつか、説明のなかに響くところがあったので引用紹介します。
<12ページ ストレスを克服する 骨格筋の血流増加 より>
ストレスの下では、多くの主要な筋肉が闘争(おもに首と肩の筋肉)または逃走(おもに脚の筋肉)を予期して収縮します。
予期して収縮、なんですね。
<147ページ 心の働き 心を静める より>
瞑想には、体と心についての新しい見方、つまり考える人と考えは別物であるという認識を、積極的に受け入れる態度が必要です。あなたの心は、あなたの手足や着ている服や住んでいる家と同じように、あなたの「持ち物」であり、あなたの外にあるものです。瞑想の間は心の中にわき上がる感情や気分や考えを
- 第1に分類できます ── どんな種類の考えが生じているのか。
- 第2に丁寧に調べられます ── この考えの下にほんとうは何が隠されているのか。
- 第3に分析できます ── この考えの誘引は何で、影響は何か。
そうすることで心の各側面が落ち着いて、穏やかになるのです。
サーンキャ・ヨーガのプルシャ&プラクリティを下敷きにしつつ、短い文字数でうまく説明するもんだなぁ。と、唸りました。
<149ページ ネガティブ性の鎖を断ち切る より>
恐怖、怒り、嫉妬、いら立ちなどのネガティブな感情的衝動を、どうしようもないと感じるときがあるかもしれません。ネガティブな感情的反応を、周囲の環境のせいであるかのように、正当化してしまうかもしれません。「彼女が私を怒ったような目で見るから怖いのだ」、「彼の無礼な振る舞いのせいでいらいらする」等々。こういう心中のネガティブな会話は何時間も何日も続く場合があります。鎖となって、避けられないように思える状況にあなたを縛りつけます。
けれども、ポジティブ思考によって思考エネルギーの波長を高めると、外部からのネガティブな影響に縛られなくなります。そうなれば外部の状況がどうであれ、勇気、愛情、満足といったもっと楽しい感情を表現することができます。「こんないらつく人を私はどれだけよく我慢していることか」などと心の中でつぶやくこともなくなります。ポジティブ思考は戦略ではありません。内面の精神的強さの自然な表れであって、真に自由な思考への道を開いてくれます。
「こんな〜」以降がポイント。ポジティブ=ポリアンナ・イズムのことではありません、ということも包括して説明されているのがよいです。
<150ページ 習慣という種から性格という実がなる より>
ネガティブな性格の特徴が表に出て何らかのトラブルを引き起こしているのなら、その特徴があらわになっている習慣的な行動 ── ひいては思考 ── を突き止める努力をしましょう。ある種の言葉を習慣的かつ無意識に使うのも、ネガティブな行動の一例です。そういう行動がネガティブな性格にいつながり、心がより高次な思考を展開するのを妨げます。
個人の文章でもマスコミの文章でもキャッチコピーでもなんでも、「これは、いまみんなが使っているこのワードを使いたかっただけか」という粗雑なエネルギーを感じることがあります。なにか刺激的と思うワードが刷り込まれたと気がついたとき、自分にそれを求める受け皿が多分にあったということにハッとさせられる。本屋さんの自己啓発本エリアへ行って自分がどのワードに反応しているかを観察すると、自分が隠そうとしている意識がよくわかり、同じような気持ちになります。こういうエネルギーを「魔」というんだろうな。
<155ページ 瞑想法 マントラ瞑想 より>
通常、単語はその意味との関係においてのみ考えられます。たとえば、「リンゴ」という言葉は食べ物としてのリンゴの心象と結びついてはじめて意味をなします。けれどもマントラは、音の振動の構成が独立するイメージや意味を喚起するようにはなっていません。
なんと簡潔な説明!
「ソーラン節って、唱えると意味はないのにあがるでしょ。あれと同じです」というわたしの説明をどこかで聞いてしまったかたは、この説明を読んで正しい理解を上書きしといてください。
全般、心のはたらきの説明が秀逸と思いました。噛み砕き方が細かい。
ラマクリ師匠のような、楽しく読んでいるうちにポン!と急に深いところへ連れていかれる感じではなく、一歩一歩ていねいに進んでいる。なのに、文字数が圧倒的に少ない。
シヴァナンダヨーガは、メソッドがとてもシンプルなところまでいき、研ぎ澄まされているんだなぁ。
産調出版
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