「グランド・マスター」という映画を観てきました。ウォン・カーウァイ監督がカンフーを撮ると、こんなにも美しくおしゃれになってしまうのか! さすがですね。
ここ10年くらい、娯楽の時間がほとんどヨガに変わってから映画はあまり観なくなったのですが、「師弟モノ」は積極的に観ます。この映画のストーリーはベスト・キッドや天下一武道会なノリではなく、厳密には「グランド・マスターズ」という感じで、各技術を受け継ぐ未来のマスターたちの交流を描いています。
慕いすぎて決別してしまうよくある師弟パターン、女性には開かれていない技術継承の道、同士の愛といった心のドラマが織り込まれ、はじめはそれぞれ技術を持つ人たちを理解するのに集中力が要りますが、後になればなるほど引き込まれて面白くなっていきます。
背景に抗日戦争があり、主人公の葉問(イップ・マン)や一線天(カミソリ)が時代に翻弄される姿を描く場面では日本語も聞こえてきます。ストーリーの展開がチャン・ツィイー演じる宮若梅(ゴン・バオセン)に移ってからは、あっという間。後半はそれぞれの人物から名セリフが飛び出します。
なかでも、「天意は私よ」と言っていた宮若梅が、のちに「自分を知る 世間を知る 人生を知る」という教えを語るシーンがたまりません。ほぼ全員、ここからの数分間が泣き所のピークになるでしょう。
カンフーの極意についてたったひと言、葉問の言う「横か縦か」も深く心に刻まれました。そして、食べていくためにカンフー講師職の面接を受ける葉問が「わたしは気功も獅子舞もできない。カンフーだけだ。カンフーは、曲芸ではない」と語るシーンで、獅子舞ってそういう位置づけだったんだぁ、などの発見も。
女性は必ずや宮若梅に感情移入することになると思うのだけど、とにかくせつない。そして、闘う姿が美しい。南北の流派や各技のことを知っている人にとっては、そうとう楽しい映画なのだろうなぁ。
もう一回観たいのだけど、今年はどういうわけかブルース・リー関連の映画が多いので、なんとなく気ぜわしい夏であります。
<余談>
この映画は音楽もファッションも素敵で、映画を観ている間から、チャン・ツィイーが駅のホームで闘うシーンでつけているヘアアクセサリーがどうしても欲しくなり
こんなの。シンプルな後ろ結びにこれをつけていると、かわいい。
久しぶりに物欲が沸いたので、帰りに手芸屋さんに寄って、
こんな感じだったかなー、と思うものを作ってみました。(作業工程は後日)
作った後で確認したら、映画のはもっとかなりボリュームがあった。人の記憶って、ずいぶんあいまいなものですね。