うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

禅と儒教(禅と日本文化 鈴木大拙 著/第五章)

禅と儒教
禅の予備知識(第一章)、禅と美術(第二章)」、「禅と武士(第三章)」 「禅と剣道(第四章)」に続いて、第五章は「儒教」。
『日本では般若心経は「無」を表すもので、チベット仏教では「空」を表わす。悟るための方法が違う』という説明をなにかの本で読んだことがある。そのとき、慈悲の心を修めて人を救おうと思える境地に至るには、個人の我執を滅退する「無」ではなく「空」に至る修行が必要なんだと言う、いわゆる密教スポコン的な意味なのだろうかともんやり考えていた。

わからないことはわからないままおいておくと、あとでもっとリアルに腹オチする解釈に出会えることがある。この章は、まさにそんな章だった。
どちらも、中国人のとらえたこと。それが日本へ伝来した。

<170ページより>
Since the second century when the Prajnaparamita Sutras began to be rendered into Chinese, thinkers who were deeply impressed by them took up their study in all seriousness. While theycould not clearly grasp the idea of Sunyata,"Emptiness," they found it somewhat akin to the Laotzuan idea of Wu,"Nothingness."

第二世紀に般若波羅蜜心経が訳され始めてから、それに深い感銘をうけた思想家たちは、きわめて真摯にその研究にしたがった。彼らは「空」の観念を明確に把握することはまだできなかったが、老子の「無」の観念に多少近いものと知った。

般若心経の前半が刺さったか中盤が刺さったかだけの違いじゃないの? と思っているのだけど、わたしはインドの教えに「空」よりは「無」を感じることが多い。「ネーティ・ネーティ」という教えは、おもいっきり般若心経(中盤)だ。日本人は、なんというか文字の関係もあるけど、老子のことばがグッとくる。ババジと同一人物であろうとなかろうと、やっぱり老子がグッとくる。

<180ページより>
The Chinese are just as patriotic and full of nationalistic pride as any other nations, no doubt; but they are more practical I imagine than sentimental, more given up to positivism than to idealism. Their feet are glued to the earth, they may occasionally gaze at the stars as they are very beautiful to look at; but they never forget that they cannot live even for a day separated from mother-earth. They are, therefore, attracted more to Chu His's philosophy of social order and utility than to his idealism and emotionalism. In this respect the Chinese differ from the Japanese.

中国人は他の国民と同様、愛国的で国民的自負心に充ちているが、察するに彼らは感傷的であるよりは比較的に実際的であり、理想主義よりも実証主義に終始する。彼らの足は地に着いている。星は美しいものゆえ、彼らも星を見ることはあろう。しかし、彼らは母なる大地を離れては一日も生活できぬということを忘れてはいない。それゆえに、彼らは朱子の理想主義(アイデアリズム)と主情主義エモーショナリズム)よりは、朱子の社会秩序論と功利哲学によけい心を惹かれたのである。この点において、中国人は日本人と違っている。

英文のほうの末尾には尊敬の要素がある。わたしが以前中国人の女の子と仕事をしていたときに、彼女へ抱いた尊敬要素はまさにここだった。(大地を離れては一日も生活できぬということを忘れてはいない)。なんとなく思わせぶりなことを言って人の同情をかおうとするような、量の計りにくい承認要求がないから付き合いやすい。「こうなりませんかね? ならないですよね」なんて探りなく、「どうしたらやってくれますか」と、ド直球だからやりやすい。国民的にリアライゼーション上手。わたしも中国人のこういうところを、すごく尊敬している。「不躾だ」なんていっている日本人は蹴散らしてくれていいよ、とすら思うことがある。


おもしろかったこの本も、もうすぐ読み終えてしまう。
英語はちっとも上達していません。