うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

武術で学ぶ 心と体の生かし方講座(甲野善紀先生)


昨年「武術を語る ― 身体を通しての学びの原点」を読んで以来、ずっと気になっていた甲野善紀先生の講座へ参加してきました。自身の身体から学んだことを動きながら話してくれる、とてもありがたい内容。
ヨガの極意を武術の事例とオリジナルの語彙で説明してもらったようなかんじがして、以後のアーサナ練習がとても楽しくなりました。やっぱりライブはいいわぁ。
武術視点の講座だったけど、わたしの場合は身体に入る前にヨーガに変換されてしまうので、ヨガ視点で刺さったところを5つに要約して感想を書きます。




1)造語が楽しい
構造の説明に出てくるネーミングが「謙譲の美徳」とか、武術っぽくてよかった。日本むかし話によくある進行&読み手の心理構造から身体の動きはこうなる(とわたしは思っているのですよ)という話など、とにかくおもしろかった。動きながら「この、いまのこれね、これは、日本昔話で言う……」なんて感じで説明をされているのを聞くのがとにかく楽しかった。
わたしも常日頃、身体のことを言語で伝えるにはまったく違う世界の単語の力を駆りなければ無理と思っているので、同じことにトライしている人の話を聞くのは勉強になる。




2)四つ足カルマのロマン
四つ足の生き物の動きから学ぶことを熱く語られる場面があって、これはまさに二本足歩行以前の生き物から動作を学ぶヨーガの理念と同じと思って聞いていた。こういう話は英語通訳の入る外国人向けの講座ではすごくウケが悪いらしい。
「わたしはこういうことにロマンを感じるんだけど、あっちの人はまったくそういうのを感じないみたいなんだよねぇ」と話されていた。以前、椅子の文化は大地よりも自分を高く置く姿勢で、自然を軽視する意識とつながるというようなことを本で読んだか聞いたことがあったのをぼんやり思い出した。




3)ムドラー
指の動き(=ムドラー)にまつわる動きのパターン解説がおもしろかった。ひとことでいうと、「あなたは和製カスタネダか!」と思う内容。
わたしもアーサナの動作の出入りでは指の動きがほぼ定まってきている。背骨の動きに連動させて指を動かすだけで、ぜんぜんバランスが違ってくる。丹田にコネクトさせるショートカットキーのようなもの。
「そういうのは、わかる人は自然とやってるもの」とのことでした。動きの滑らかな人の細かな手指の挙動は、真似してみるとそういう発見があるので、みなさんも普段の練習で意識してみましょう。
(わたしが最近デモンストレーションに長く時間を割くのも同じ理由です)




4)利き手と体幹
組み手(インターロック)と肩の下がり方、その心理的背景の独断考察がおもしろく、ほんとそうだよなぁと思いながら帰った。ぱっと組みやすい方を避けた方が、身体アハンカーラが減って体幹と素直に連動できるという話。ごもっとも。
ヨーガで言うアハンカーラをこのとき「手が自信過剰」とか「手がでしゃばる」とか、そんなニュアンスで話されていました。エゴとはちょっとニュアンスが違う。




5)皮膚感覚の情報で混乱する身体
武術は相手との接触がある。剣でも手に振動が伝わる。いままで皮膚感覚の情報については自分と床の接点、自身の皮膚同士が触れ合う感覚しか意識したことがなかったけど、武術視点で掘り下げた「皮膚感覚の情報と意識と混乱」の話がとても興味深かった。
呼吸が乱れたときに床から跳ね返る息の感触とか、細かすぎるけどそのくらい細かいものなのだと思って今後やっていくべしと思い、楽しみが増えた。



ウェブサイト上であちこちの講座の案内がされています。
「自分としては、こうではないかと思っている」というようなことがある人がいくと、とても楽しめると思います。
(来月は大阪で講習会があるみたいですよ)