うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

パティ・ボイド自伝 ワンダフル・トゥディ(ジョージまで編)

先日この本の中の、インド・リシケシへの同行瞑想時代について先に書きましたが、ふつうにこの本の紹介をします。今日は「ジョージまで編」です。おのずと次回は「クラプトン以降編」になります。
このカワイイおねーちゃん誰? と思った人は、インドヨガ時代編の冒頭に紹介を書いています。
女子のみなさんは、「どんだけかわいくても、華やかに男に寄りかかる人生を選ぶということは、こういうことみたい。美貌は自立に生かすべし」という教訓的な要素がありますので、ヨガっぽくないけど面白く読めるかもしれません。
これは暴露本という部類に入る本らしいのですが、その恋愛遍歴(略奪の流れ)よりも、60年代ロック周辺のドラッグ・カルチャーの実体の記述の方がすごくて、これまで「あーあああああ」と思うようなブライアン・ジョーンズをはじめ、「これはイっちゃってんのな」と思う映像をいくつも見たことはあったものの、なんとなく日記のように書かれた記述の方が、えぐい。具体的なので。

今日紹介するのは第9章の「ジョージとの別れ」まで。次の第10章は「エリックについて」という章なので、ここで区切ります。そのあともエリック・クラプトンジョージの友情がクロスしてるので、どこってこともないのですが。
いきなり第4章から紹介しますが、それ以前はパティさんのモデル時代のお話。ジョージに出会う前にジェーン・アッシャー(ピーター&ゴートンのピーターの妹)と仲良しで、ジェーンはその後にポールと暮らし始めたとか、ロック・ファンには「へ〜」なことがけっこうあったりして面白かったのですが、こういう話はロックな人たちのブログにお任せすることにして、スキップ。
・・・にしても、今日はあんまりヨガっぽくないです。広い意味でいえばドラッグから瞑想へ移行するロッカーたち周辺のあれこれ、だったりはします。うーん。やっぱり強引かな(笑)。
ではでは、何箇所か紹介します。


■第4章 ジョージについて から

<116ページ>
 そんなこんなで、ジョージが有名なポップ・スターだというのを忘れてしまいそうな日々だった。(中略)(テレビ出演で)ジョージが本来の仕事をしている姿は、信じられないくらいに違って見えた。まるで制服でも着ていたかのようだ。ステージとオフとで、ああも変わる人を、それまで私は知らなかった。

お付き合いしたての頃。アツアツすぎる結婚会見映像はこちら。

<120ページ>
 長きに及んだアメリカ・ツアーの終わりに、ビートルズはニューヨークでボブ・ディランと出会っている。(中略)特にディランには、マリファナの魅力を教えてもらったらしい。『サタデー・イヴニング・ポスト』紙のアル・アロノウィッツが共通の友人で、ディランをビートルズのホテルに案内したという。だが、どうやらディランは、「抱きしめたい」で「I can't hide(隠せない)」と歌っている部分を「I get high(ハイになる)」と聴き間違えたようで、メンバーたちを筋金入りのドラッグ・ユーザーだと思いこんでいた。スイートに入るなり「よしみんな、上等な葉っぱがあるぜ」と言ったそうだ。というわけで、ディランがジョイントを1本巻き、みんなでワインを何本か空け、愉快なパーティが繰り広げられた。

愉快とはこれ・・・。この本は、こんな話ばっかりです。


■第7章 哀しみのはじまり から

<200ページ>
 ピルチャー巡査部長はといえば、ますます名をあげていった。そしてどうやら、世の中からドラッグを一掃したいと思っていただけでなく、セレブの世界を楽しんでもいたようだ。レッドランズでのキース・リチャーズ連行劇も指揮していたし、ドノヴァンをしょっ引いたのも彼だった。ミュージシャンは得意分野と見えて、ブライアン・ジョーンズも逮捕した。わが家に来る数ヶ月前には、ジョンとヨーコのフラットを真夜中に襲撃している。

豪華すぎる逮捕シリーズ。


時間軸で読んでいくなら、インドヨガ時代編はこの位置です。

<210ページ>
 レコーディングがなければ、たいていアップルの事務所にいた。その事務所はきれいな女の子で溢れかえっていた。そこへきてジョージはセクシーだし、ハンサムだし、面白いし、有名だしと四拍子揃っている。おまけに、前はアフター・シェイブやコロンすら使ったことがなかったのに、インドから帰国して以来、ビャクダン油をつけるようになっていた。おそらく女性の気を引くためだろう。ただ、そんなことを指摘したところで否定されるのが落ちだ。彼といると自分が疑い深くて理性のない、嫌な女に思えてきた。

最後の一行、乙女よのぅ。ビャクダン油が気に入っただけかもよ。いい匂いだもの。


■第8章 フライアー・パーク から

<224ページ>
 この屋敷は1898年にフランク・クリスプ卿が古い僧院跡に建てたものだった。クリスプ卿は裕福なロンドンの弁護士であり、科学者で園芸家でもあった。それにしても、かなり愉快な変人だったに違いない。(中略)庭園に通じる入り口には「友人を顕微鏡で細密に見てはいけない、彼の短所はすでにわかっているのだから、変なクセは見逃してやれ」という忠告が書かれていた。なんて賢明なんだろう。

この面白い家の話は、ジョージの自伝にも書かれていました。多くのインスピレーションを受けたようです。

<232ページ>
 それは、またしても、ロンドンで逢い引きを楽しんでいる時だった。エリックは、作った曲を聴いてもらいたいと言って私を家に連れ帰った。(中略)テープのスイッチをオンにした彼は、ヴォリュームを上げ、最高にパワフルで、それまで一度も聴いたことがないほど感動的な曲を聴かせてくれた。
 それが「いとしのレイラ」だった。自分を愛しているが、決して手には入らない女性をどうしようもなく愛する男を歌ったものである。

でれれれれれれれーーーーん


■第9章 ジョージとの別れ から

<253ページ>
 そうした中、ラヴィ・シャンカールは、我が家の常連客でジョージも敬愛していた。だからラヴィに甥のクマール・シャンカールを家に置いてやってくれないかと頼まれた時、ジョージの答えは当然「イエス」だった。(中略)クマールはある夜、最高に美味しいインド料理を作った。それ以降、彼はキッチンの支配権を握ったのだ。

(中略)

 私は愕然とした。彼は私のたった一つの楽しみを奪ったのだ。価値のある、クリエイティヴな何かをしていると感じられる大切な楽しみを。

このへんからかなりつらい感じをかもし出す描写ではあるのですが、一方では気にしすぎでは…… という気もします。

<257ページ>
 ニューヨークからは飛行機でジャマイカに行った。珍しく夫婦水入らずだった。もともとは、ロサンゼルスに行く予定だったのだが、ニューヨークのジャーナリストが、ジョージにロサンゼルス行きをやめるように警告したのだった。チャールズ・マンソン裁判が審議中で、彼の弁護側はマンソンがシャロン・テイトを殺害した時、ビートルズの音楽に影響を受けていたと主張していたのだ。

マンソンは、マハリシのこと書いとるんだ、っちゅー「セクシー・セディー」までも、自分へのメッセージと受け取っていたらしいですよ。

<263ページ>
 ジョージはエリックがヘロイン中毒であることを知っていたが、中毒をおおっぴらに口にする者はいなかった。ドラッグの力を借りてでも、エリックをステージに上げることができたら、彼の状況が公然の秘密となり、友人たちが彼に救いの手を差し伸べようとするきっかけになるのではないか、とジョージは考えていたのだ。しかし、エリックが午後と夜の2回のステージをこなすためには、彼がニューヨークへ到着した時点でヘロインを調達しておく必要があるのは、誰もが分かっていた。ヘロインを持って飛行機に乗ることは論外だったからだ。彼のためにホワイト・エレファントと呼ばれる純度の高いヘロインをどうやって調達するかを、みんなが話し合っていたのを憶えている。

ジョージは、エリックのことも愛していたんだよなぁ、と思うんですね。この本を読むと。もう、男とか女とか独占するとかそういうのの基準が普通じゃなくなっている。

<270ページ>
 後になって思えば、ジョージの女遊びは、私を試すためだったような気がする。私を挑発すれば、彼を取り戻そうと躍起になるのではないかと見込んでいたのではないだろうか。でも、当時は、自分が拒否されていると感じていた。

(中略)

 きわめつけは、彼がリンゴ・スターの妻、モーリンと関係を持ったことだった。

(中略)

「何をしているの? モーリンが部屋にいるんでしょう? わかっているのよ」。だが彼は笑っただけだった。彼はスタジオにいるはずで、みんなが待っていた。ようやくジョージはドアを開け、こう言った。「彼女はちょっと疲れているみたいで、横になっているんだ」。

(中略)

 モーリンは、気持ちを隠そうともしなかった(中略)翌朝、彼女がまだそこに居座っているので、私は言った、「子供たちのことを考えたことがあるの? どういうつもり? 私は気に入らないわ」と迫った。すると彼女は言った。
「おあいにくさま」
 この時期に起きた何もかもが、常軌を逸していた。私たちの生活を支えるエネルギー源は、アルコールとコカインだったし、私たちの世界に足を踏み入れる誰もが同じ有様だった。

めちゃくちゃといえばめちゃくちゃなのですが、読めば読むほどに、うちこはジョージに親近感をもってしまう。ジョージのそれは、アルコールとコカインのせいではない気がする。

<276ページ>
夕方に帰宅した私は、話し込んでいる彼ら(エリック、ピート・タウンゼント、グレアム・ベル)を目にした。私はスープを作り、それをみんなで、しらじらしく、にこやかに食べた。すると、エリックが私を脇に連れて行き、またしてもジョージと別れるように懇願し出したのだ。どのくらい二人きりでいただろうか。私には何時間にも感じられた。情熱にあふれ、あまりにも必死で、有無を言わせないエリックの態度に私は圧倒されてしまい、どうしていいかわからず混乱していた。だが、今こそ決断の時だった。エリックのもとに行くべきなのだろうか?
 私のためにこの世で二つとないすばらしい曲をかいてくれ、私のせいでこの3年ものあいだ、地獄のような日々を過ごした末に復活し、そして愛を訴え続けて私を疲弊させてきた彼のもとに? それともジョージのもとに留まるべきなのか? かつては愛したものの、今はすっかり冷たくなり、最後に触れ合ったり愛していると言ってくれたのがいつだったかも思い出せないほど無関心な夫のもとに?

この本を読んでいると、美人ほど「執着されること」への欲求が高いのかな。なんて思ったりする。たしかにあの曲はずるすぎるけど、「私がインスピレーションを与えた」って何十年も経って言い続けるのもヘンな感じだ。
ジョージは無執着なだけで、無関心ではなかったんじゃないかと思う。


なぜかジョージ側に共感しながら読んでいました。まあでも、美人に生まれたら楽しいんでしょうね。彼女はリシケシでなにを感じてきたやら。行って来ただけかーい! と思わずツッコミたくなる後半戦は、まだまだ続きます。

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