ヨガの練習に行ったら、女子更衣室で元ライブドア社長の仮釈放記者会見の様子が話題になっていました。風貌だけでなく、心がどう変わったのかが気になる、と。
時事ネタにインド思想をからめるのは、やろうと思うとなんでもできちゃうのでできるだけ避けているのですが、会見の動画を見てみたらすごく興味深かった。
これは、なんというかヨガ的に教材度が高い、と思いました。
「すごいプラティヤーハーラ!」
第一印象で、そう感じました。プラティヤーハーラ(制感)を得た人のようです。
書物で割かれる句数は少ないですが、俗世でのお役立ち度はサマーディ(三昧)よりも格段に上であろう「制感」。わたしはこのプラティヤーハーラの説明では、ハタ・ヨーガの古典の中でも「ゲーランダ・サンヒター」(以下Gh.S.)4章の内容が好きです。
英語版の方が今日伝えたい雰囲気がよく出ているので、佐保田先生の訳と併せて英文も添えます。(英文の引用元は末尾にリンクをはりました)
Praise or censure; good speech or bad speech; let one withdraw his mind from all these and bring the Citta under the control of the Self.
称賛であろうと、悪口であろうと、心地よい声であろうと、恐るべき声であろうと、それらのものからこころを引っ込めて、これを自己の統制下におくべし。
(Gh.S.:4-3「続・ヨーガ根本教典」)
この会見の中で、「チッタ(感情を含む心)」は抑えながら「マナス(意思・思考の心)」は表明するというバランスを見ました。とにかく本心は押さえつけてしまっておけ、という全方位型リスクヘッジでなく、ユーモアを含めたしなやかな対応。
チッタもマナスも日本語だとばっくり「心」ってことになるのだけど、これは、すごく微妙な境界が見えている人の対応です。マスコミだけでなく個人までもが「印象操作」をする時代の渦中に居ながら、そのマーヤーの世界で創造し、維持し、破壊するってことを企んでいる。
その事業計画を語る目の奥が楽しそうで……
「どんだけいいグルについたんだよ!」
と思わずツッコみたくなりました。
精神の安定性は制感法(プラティアーハーラ)によって得られる。
(Gh.S.:1.10〜11「続・ヨーガ根本教典」)
「制感」の継続・維持の大変さは、誰もが気になる課題。この修行の成果とともに「マナス」は変わっていないところを見て、あらためて人間の可能性のきめ細やかさを見た気がしました。
▼今日引用紹介した英語版ゲーランダ・サンヒターはこちら
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