美術手帖の特集で知り、観にいってきました。
「女性」という性別をこんなにも意識しながら観ることになる絵は久しぶりだった。
おどろおどろしい印象に目を奪われるのだけど、この人の描く「身体観」のアプローチは独特だ。臓器も骨も、その存在と主張を切り取るような描かれ方で、「第七頸椎」という作品もある。
多くの作品の中でもっとも目を奪われたのは「終極にある異体の散在」という作品。そこに描かれた女のアキレス腱を噛み切ろうとしている犬の表情から、「噛み切られようとしている女」の、「ああそうやって、そこを狙うものがいるわ」という感情が自分の中に湧きおこる。
「ダメージを与えることができる方法を目の前にして嬉々としているその表情」に、「そういうことが、ほら、ここに。」と示されたようで、逃げられないハラ落ちのような、そんな気持ちにさせられた。
「あるものは、ある」という事実と感情のオンパレード。
「完全な幸福をもたらす普遍的万能薬」のための下図の表情も、なんともいえないものだった。これについては、なんでそこ表情がそんなにも印象に残ったのかが自分でも分解できない。「完全な幸福」の表情だからだろうか。
家に帰ってから、ふたつ、印象的なインタビューを動画で見た。
▼筑紫哲也さんの番組
美しいんです。
▼別の番組。授業について語る中に、印象に残るフレーズがあった
はじめはカタいんだけど、後半で飛び出す言葉。
「自分が愛情を注いできたものに対して、他人が割り込んできてジャッジを下すことへの恐怖、苦痛」
アキレス腱を狙う犬の表情に目を奪われたのは、社会と接していく上で避けられないものをナマナマしく可視化されたからかもしれない。
■展示は3月18日まで
松井冬子展 世界中の子と友達になれる(横浜美術館)
美術手帖 2012年 02月号 | |
美術手帖編集部 美術出版社 2012-01-17 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD] | |
NHKエンタープライズ 2008-11-21 売り上げランキング : 3976 Amazonで詳しく見る by G-Tools |