天候不順で飛べないなどの理由でのキャンセルは過去にもあったそうなのですが、お客さんを乗せた後も修理を続けて、2時間後に「飛ばない」ことになりました。
ことの流れは、こうでした。
出発時間になっても飛ばない。「メンテナンスが必要になり……」というアナウンスがあったので、とりあえず寝た。
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1時間後に起きたら、まだ飛んでいなかった。
20分後、「あと30分で原因が判明します」という、「???」と思うアナウンス。
原因的にまあこの程度なら10時間いけるでしょ、などの判断があるのだろうと思い、海外の「ドッキリカメラ」みたいな番組を見ながら過ごしていました。
サンドイッチとジュースが配られました。
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2時間経過。「燃料漏れをしていることがわかり、修理の完了には時間がかかるため、今日は出発しません。このあとみなさんに夕食をお出しした後、ホテルへお連れします」のアナウンス。
このときに「とはいえ、もうちょっと知りたいのよ先の予定を」と全員が思ったわけですが、英語が流暢なひとりの男性がフライトアテンダントさんに質問をしてくれました。回答は「とにかくわからない。今日は飛びません。私たちも休まなくちゃいけないので」と。
この「私たちも休まなくちゃいけないので」の言い方とスタンスが妙にキッパリしていたので、おかしくなりました。母も聞き取れていたようで「いまの言い切りは、日本人にはできないね〜」「も〜しわけございません、っていう展開だよね」と話していたら、周囲の人もおかしくなったようで、笑いが漏れました。
「さっきサンドイッチ食べたのにね」「機内食が残っても困るんじゃない?」「ブロイラーだ〜。これでまたホテルでご飯が出るなら、うちこはホテルのご飯のほうがいいのになぁ」なんて話をしながらも、とりあえず出されたものはいただいて、ホテル日航成田に泊まらせてもらうことに。
出発できなかったのは残念だったし、「で、どうすんの?」という答えを聞かぬまま、とりあえずホテルでヨガをして、夕食を予約して(300人くらい急に詰め込んだので順番待ちになった)、コンビニへ行って戻ったら「あす朝飛びます」というお手紙がドアの下にはさんでありました(後に本文あり)。
わーい!
もともと深夜に到着予定だったので、半日ずれると昼になる。「ま、いんじゃね?」ということでこの日は母と久しぶりに語らいながら夜を過ごしました。そして寝る段になって、コンタクトレンズの保存液を持ってきたつもりが「特別な消毒液」を持ってきてしまったことに気づき、ホテルのコンビニで保存液を入手。これは不幸たなぼた。危ないところだった。
この日は「翌朝飛ぶものだ」と思い込んでいたので、幸せでした。
が、この書き方でわかるとおり、この約束は実現しなかったのです。
「爆発的に最悪なクレーム殺到の場面」に出くわすことになります。
なぜならこの便は「マーレ経由コロンボ行き」で、7割の人は人気のリゾート地モルディブへ向かう人たちだったからです。ハネムーンのカップルも何組か見かけました。
うちこはこの非常事態のなか、ほかの搭乗者のみなさんのクレームと人物像を観察しながらずっとメモをとっていました。
そしてその後、うちこは飛行機にまつわる免責とか航空法について学ぼうと思うことになります。(まだ学んでいないのですが)
ひとまず、この日はスリランカ航空からのこんなお手紙で安心をしていました。
まだ「お客様」としてサービスを受けられる身分だったからです。
こういう文章も今後なにかの免責説明に役立つかもしれないと思い、「これ保存版」と思ってリュックにしまいました。こんな文章でした。(フォントサイズも再現)
○○○便お客様各位
本日はご夕食、ご朝食をご用意させていただきます。
(省略;そのほか無料有料範囲の説明がいくつか)
今回の遅れにより生じた現地での減泊分は免責となります。弊社での補償の対象とはなりませんので予めご了承ください。
明日の予定に関しては以下のとおりです。
成田空港 出発時刻 09:30
マーレ 到着予定時刻 16:30
コロンボ到着予定時刻 18:30
空港行きの専用バス ホテル発 07:00 5台
本日と同じFカウンターにお立ち寄りの上新しい搭乗券をお受け取りください。
重ねましてご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。
スリランカ航空 成田空港支店
あとで理解したのですが、ツアーで旅行代理店を介して航空券とホテルを手配している人は、「行かなければ全額もどる」という選択肢があるようで、「お客様の意思によりツアーの取り消しをなされる場合、お手数ですがお申し込みの代理店様へご相談ください。」という書き方をされていたんですね。そのときは関係ないと思って時間しか見ていませんでした。
いずれにしてもこの時のスリランカ航空のスタンスは「ご迷惑をおかけしました」「私たちのせいなので、なんとかしようとしている」というスタンスでした。理由が「燃料漏れ」なので、賭けで飛ばれても困るというんで、そんなに大きなクレームの声は私の周囲では聞こえてきませんでした。
そして今回の件では「搭乗者を空腹にさせない」という状況への徹底がみえました。きっと怒りにひも付けて「餓死したらどうしてくれるんだ」とか言っちゃう人がいるのでしょうか。残念な自体の当事者ではあったのですが、一方ではずっと「スリランカ航空、大変だろうなぁ今……」と思っていました。
ものすごくこじれる展開になるのは、この翌日のことです。
非常時に平静でいるのって、やっぱりむずかしいのです。(つづく)