うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

自己欺瞞(「タントラへの道」より)

タントラへの道」のなかに、ひとつ爆発的にうまい喩えがあったので、紹介したいと思います。今日は長い引用はありません。

<87ページ 「自己欺瞞」の章冒頭より>
 自己欺瞞は、精神的な道を歩むうえで、私たちにたえずつきまとう問題だ。エゴは、つねに精神性を成就しようとしている。それは自分の葬式を自分で見たいという欲求に似ている。

「自分の葬式を自分で見たいという欲求」という喩えに唸る。


本の紹介はここまで。
もうここからは雑談です。

自己欺瞞」という言葉について。
コトバンクには、こうある。

自分で自分の心をあざむくこと。自分の良心や本心に反しているのを知りながら、それを自分に対して無理に正当化すること。

よく読むとこれはただの「反転」という意味しか読み取れなかったりする。
たとえば「良心」とあるものが、「俺は地位を登っていくべき人間で、まわりはそれに気がつかないバカばっかりだ」と思っていながら、「いやいや、自分はそんな」とかいっちゃうのも自己欺瞞だ。


「反転する」という動詞を示す解説だが、以下の解説はもっと深い。
The Skeptic's Dictionary 日本語版 二千年紀のための懐疑論ガイド

自己欺瞞とは、間違ったことがらや無効なことがらを、あたかも事実か有効なことだと信じてしまう、プロセスや現象である。つまり、自己欺瞞は誤りを自分自身のために正当化する方法である。

プロセスや現象であり方法だと。
コトバンクの中の解説の「良心」や「本心」はそぎ落とされ、事実に対する向き合い方の方法であるという説明だ。


この末尾のまとめが、よい。

自己欺瞞は必ずしも意志の弱点ではないが、認識論的な無知や怠惰、無能にもとづくものだといえるかもしれない。事実、自己欺瞞は常に誤りであるわけではなく、時には役立つ場合さえ生じうるのだ。もし自分の能力と人生にたいして徹底的に正直かつ客観的になったとしたら、私たちは自分と人生に、完全に絶望するだけだろう。

うちこはこれまで漠然と、「プライドの高い人は判断がブレる。精神的な体力がない」というふうに感じてきました。客観的に自分の状況を見るのは、ものすごくしんどいことです。
だからこそ、多くの人を率いるポストにつく人には「精神力」が必要だと思う。「根性論」では、長期的にはダメです。フルマラソンを早く走る人でも、精神力が弱い人はいる。打ち負かす、というスタンスで走る人。ゴールが決まっていないと続かない精神力は、あらゆる場面に応用は利かない。


組織というのはおもしろいところで、毎日たくさんの「自己欺瞞」に出会います。たくさんです。5個や6個の話じゃないです。一日のうちに強く覚えていられるのは5種類くらいだけど。
それぞれの人が景色を見ている、立っている場所が違う感じです。なので、「そっか。そこから見ると、そう見えるか」と許せることも多い。
自分の「自己欺瞞」の場合は、以前はそのフラグが立つトリガーに気づいていませんでしたが、「もう心の体力的に無理」というのがその瞬間であることに気づきました。
なので、本来向かうべきことに関係のないエゴをぶつけられたときには「この人、弱ってるなぁ」と思うのです。「なら、いたわればいいのか」というとそうではなくて、生物としての心の生命力を上げてもらって、死への恐怖から遠ざかってもらうしかない。身体がヨレヨレでも、「明日死ぬこと」に恐怖がないとしたら、人に八つ当たりしたり欝だといって特異性をアピールする必要もないでしょう。


いっけん強そうなサクセス男子キャラを演じている人ほど、やっかいです。
ヨイショ・ニーズが際限なくて、こちらの体力を奪われる。


女性の場合に話を移しますが、今までぶち当たってきた自己欺瞞は「目立ちたい」「ちやほやされたい」くらいですんでいたので、「すごいじゃぁぁぁん」とか「さすが!」とか言っておけばよかった。女の子はラクです。
ところが最近うちこも歳を重ねてきまして「母のように優しく、そして強いサクセス女子キャラ」の人々に接する機会がちらほら生まれてきました。勝間なんとかさんみたいな感じです。
そうすると、2秒で出てきます。


 中のオッサンが。


「もっとモテてきたら、こうはならなかったんじゃね?」とか言い出す。


うちこにはひとり、とっても素敵と思っている女性の偉い人がいます。
その人は、中のオッサンも大好きだといっていて、彼女は、こういう人です。


「なんで求められるとつい厳しい道を選んじゃうんだろ、あたし」


キャメロン・ディアスみたいな笑顔をぶちかますチャーミングな人。
彼女とは半年くらい近くで仕事をしたことがあるのだけど、「サラリーマン的にはリスクを配慮して処理しておくべきところを、良心がつい漏れ出ちゃう」感じの人。偉くなって、すごく疲れた様子の時もあるのだけれど、たまに話すとやっぱりかわいいドMさん。
今日うちこはとても精神的に疲れることがあったのだけど、彼女の存在を思い出したら元気が出てきた。

みんなそれぞれに、会えないときも苦労をしていて、でも心の中ではいつでも再会できて、励ましあえる。彼女の目から見ると、うちこのほうが元気キャラの設定になっているようだ。会うと「相変わらず元気そうだね。ヨガも相変わらずやってんの?」と聞いてくる。「やりまくってますよー! うふふ」と答える。
彼女はうちこよりも先にヨガを始めていたのだけど、バレエに転向しました。でも最近は本当にしんどそうな彼女。脚、あがるのかな。今度会ったらきいてみよう。