うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

青い壺 有吉佐和子 著

全十三話の連作短編で、お昼休みに毎日一話ずつ楽しみました。

最後は夢中になって三話まとめて読みました。これこのまま連続ドラマにしたらおもしろいよな・・・、と思ったらドラマになっていませんでした。(なんで?!

 

ずっと有吉佐和子さんの作品を読んでみたいと思っていました。

多くの小説を読んでいる友人と一緒に古本屋に入ったら数作品が並んでいたので「どれか読んだことある?」と訊いて、まずはこの本から入ってみることにしました。

 

いろんな属性の人の家庭内の会話が聞ける小説でした。

戦争を体験した世代とそのあとの世代の本音がわかるし、どんなに性格のややこしい人もその人なりの論理を確立していることが感じられて、70代・80代同士で展開される不調マウンティング(?)も、まるで自分がされているかのように感じるのが愉快。

内臓が痩せ衰えた分をコルセットで締めて胸を押し上げると腰がラクということが、まるで自分の身体がそうなったような臨場感で伝わります。

 

キラーフレーズを削ぎ落として読み手に負担をかけない文体で、年長者の名前に意外とキラキラネームな人がいたりするのが、なんかいい。

どうだ、うまいこと人間同士のあれこれを要約してやったぞ! という気合いの入ったセリフがなく、表現が一般的で、等身大の見栄やプライドが手に取るように「あるある」な話として浮かんできます。

 

青い壺の価値をどう見るかで人々の心情がわかる、ユニークな連作です。

他人から見たら不遇なこともラッキーなことも、わたしの感度で楽しんでいくぞ! と思える、読んで前向きになれる本でした。

こんな老人と中年の関係って、どうよ? という問い(あるいは、脅迫)のように見えて、これ一冊が高齢者の見本市みたい。40代でこんな多角的な視点で書けるのは、相当の取材や人間観察を重ねているな・・・、と想像を掻き立てられました。