うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

「死ね、クソババア!」と言った息子が55歳になって帰ってきました 保坂祐希 著

平日の合間にある祝日に(きのうです)、気軽に読める物語に触れたくて、タイトルにつられて読んでみたら、あれよあれよと一日で読んでしまいました。

現代のさまざまなトピックが織り込まれていて、シングルマザーの子育て、女性活躍社会の号令、キラキラ女子の承認欲求、わからない寿命・わかりそうな余命、税金の使われ方に対する高齢者同士のポリシーの違い、70代同士50代同士の友人関係などなど、テンポよく読者に負担のない構成で読ませてくれて、気分転換になりました。

 

 

子供にとってエグすぎた出来事が明かされる場面では、こういうことってあるよ・・・と、息子に同情しながら読みました。

親のいないところで子供に直接吹き込まれる親族からの揺さぶりは、風通しをよくしようと思ったら避けられないし、防ごうとすると親子関係が牢獄状態になってしまう。

始終「こういうことって、ある・・・」の連続。

昭和の映画だったら確実に長岡輝子さんがやる役だな、と思うような友人が出てくるのだけど、そのキャラクター設定も絶妙で。

 

 

あの時は言えなかったけど、今は時代が変わったから言えるってことは、どの世代にもきっとたくさんある。だけど登場人物たちが「あの時言えなかったのが、あの時のわたし」という意識とともに、静かに風をしのいでいる。ただ奴隷のように忖度してきたのではなくて、親愛の気持ちがあって忖度してきた自覚がある。

自分の尊厳がないがしろにされていると感じる不安が引き起こす家族の問題が次々起こるのだけど、和解の瞬間もたまにあって、「すがすがしい瞬間」にスッと胸に呼吸が入る。なんだか人生後半の濃縮ライブを見せてもらった気分。

 

 

書店へ行くと、こういう70代向けの小説のマーケットがいちばん大きいのがよくわかる。

高齢者向けのコバルト文庫みたいなのも、読むと勉強になる。