加齢とともに前のめりになるのは、膝や腰が弱ってくるから? うん、きっとそれもそう。でもそれだけじゃない。これは一緒にヨガの練習をする人の観察でも思うことですが、なにより自分自身の心の観察からそう思います。
変化し続ける道徳観やルールの平均温度に対応するために、前のめりになっていく自分を感じる。些細なことですが、そういうことがたくさんあります。
先日、2年縛りの通信サービスを解約するために窓口へ電話をしたのですが、その電話をする行為ひとつをとっても
- その月にそれをすること忘れたら違約金が発生する
- その申請はネットのどこでするのだろう(検索した)おっと、電話しなければいけないのか(と知った)
- 契約自動更新月のお知らせハガキに電話番号があるけれど、電話しなければ解約できないとは書いてない。ネットの回線サービスなのに
── ふぅ~。うっかりするところであった。さて、電話をかけるとして ──
- 同社のほかのサービスへの乗換えをすすめられるかな
- 解約理由の明確なフレーズを用意しておいたほうがラクかな
なんてことを考えて電話をしました。そうしたらあっさり解約できて、肩透かし…。「引越し先にもう回線がある」なんて小さな嘘も用意していたのに。さて、次に契約する回線を決めなくちゃ…。
上記の事例は些細なことですが、こんなふうに確認することの性質が変化していて頭が疲れます。海外旅行へ行くときは保険に入らず宿も予約しないくせに、なぜか日常生活でこんなふうに疲れる。なんでだろ…。
こういうモードに入っているときのわたしは、下の写真の真ん中から左のようになりそうな状態です。
膝の後ろがピーンと伸びちゃって、細かいところに緊張が走って前のめり。
そして膝だけでなく
ひじ下、手の指の付け根の緊張がすごい。
わたしはこの状態になっているとき、神経が外部との折り合いに積極的になりすぎていると感じます。
なにかTODOが発生したときに「これであってるのかしら。理解漏れはないかしら」と小さな警戒を発動し続ける。冒頭のような、契約更新月情報を得たときのわたしのようなメンタル。
ヨガの練習の場ではわたしは観察者の立場を取ることができるので、だんだん前のめりが減って後ろに体重を配分できるように変化してゆく人の様子を見ることができるのですが、「後ろに乗るんですね!」と過剰に適応しようとして顎が上がるほど急に後ろにガックンと重心を後ろへもっていこうとする人もいます。
そんなに急いで対応をしようとしなくても大丈夫なのだけど、こればかりは気質。わたしも似たところがあるのでわかるんです。
そんなとき、わたしは
お尻の穴を閉めながら
前に乗りすぎている体重を半分後ろに戻して
そして、上がってしまったあごと
パッカーンと開いてしまったあばらを少し閉じる
この順番で言うようにしています。
その後の声がけは
- 首の後ろ、うなじをまっすぐにして
- おでこの力を抜いて
- わきの下の力を抜いて
- 手の指の割れ目の力を抜いて
上記のことを言います。優先順位は人によってばらついてきます。
首の筋が立ったり、口が少し尖る人もいます。これはもう、設定の、仕様の問題。あなたのせいじゃない。こんな土偶に誰がした。
目と鼻と口が前についているから、しょうがない
重心を中心に集められるようになるには、わたしはけっこう修練がいると思っています。10年以上練習をしているわたしでも、ふと自分の重心を省みて
前か後ろかしかない
という、重心の二元論に近い状態に陥っていることに気がつきます。中間にいられない状態になっている瞬間を見つけることがあります。
これを日常の思考の状態に置き換えると
へらへらとおしゃべりになるか、むっつりと堅苦しくなるかしかない
という状態に似ている。あ、いま自分は判断を保留する力が弱っているな…と感じます。心の状態がよいときは、判断を保留しながら他の方法を探すこともできるのに。
わたしは、ただ立っているだけのターダ・アーサナ(山のポーズ)のときは少しセラピーの要素を入れつつガイドするようにしているのですが、そのセラピーの要素というのは、
いまこの場には、間違いとか損をするとか得をするとか
ジャッジもリスクヘッジも野心も必要がない。
前のめりは不用。
ということであり、
日常的に繰り返している
「自分は判断を誤っていないか」という小さな断罪を
いまはしなくてもいい瞬間である
ということを身体を通じて理解する瞬間でもあるのだけど、もちろんこんなふうには話しません。
おしっことオナラを同時に我慢する感じで立って♪
と言います。ムーラ・バンダとウディヤーナ・バンダの初歩的な感じかたとしてこのように言います。
この、左に近い状態のときは、実はムーラ・バンダ(お尻の穴のほう)がほんの少しだけ甘い状態ではないかと、わたしの体感で思っているのです。ヨガをしたことのない人も、右に行くほど、少しずつお尻の穴を閉めているイメージで見てみると、わかるんじゃないかな。
腕の力を抜いた状態でまっすぐ立つのは、けっこうむずかしいです。足首と足の甲が柔らかくならないと、なかなかうまくできません。
なので練習の始まりと終わりに立位を観察して、その状態に意識を向けることをおすすめします。足首と足の甲が柔らかくなったぶん、背面に重心をあずけやすくなっているはずですよ!
▼立位についてのほかの話