いまはシークエンスを説明する写真とアーサナの説明文章が併記された本がいくつか出ているので、相対的に言うとこの本はアーサナの手順や説明というよりも、思想や歴史の語られている本といったほうがよさそうです。
著者とほかの練習者のかたの対談はとても読み応えがあって、たとえばエゴについてなど、練習を続けていくうちに誰もが気になってくるトピックについて語られています。
本を出版する経緯のなかでも、シュリ K.パタビジョイス先生がはじめ出版を拒否した理由が書かれていて、「サンスクリットはとても複雑な言語で、1つの単語が4つの意味を持つことがある」ということを言われていたそうです。
途中からはアーサナの説明になっていきます。これは一挙動一呼吸のアシュタンガ・ヨガの練習をしたことがないと、これだけではわかりにくいかと思いますが、やったことのある人であれば文字だけでわかる内容です。
なかでもプライマリー・シリーズはヨガ・チキッツァといって、臓器の浄化、病気から護るはたらきをもつことなどの解説が、とてもよい。いまはいろんなヨガのメニューがあるけれど、アシュタンガ・ヨガ=しんどいというイメージを持っている人に、このあたりの健康メリットは広く知られて欲しい部分。わたしはもともと便通がよくなかったのが、アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨーガの練習を始めてから快便体質になったので、ほんとうにこれは強く感じるところです。
そしてこの本を読んで、あらためてバッダ・コナアサナをもっとまじめにやろうと思いました。
この本では、もともとのルーツである「Yoga Korunta」(ヨガ・コルンタ)という書物にはこんなことが書かれていたのか、ということをうかがい知ることができます。
「Kortnta」の意味はそのままの綴りで調べてもわからなかったのですが、ほかの記述で見つけた綴りの「Kurunta」であるなら「ヨガの黄色い不死の花」という意味になるのですが、なんともすてきな題名です。
サルヴァンガアサナとシルシャアサナ(肩立ちと倒立)がアムリタビンドゥを貯蔵する方法であることなどは、どのハタ・ヨーガの教典とも同じで、それが現代のアシュタンガ・ヨガのなかでどのように解説されるかという視点で読むことができます。神話学的な要素(神さま要素)はあまり織り込まれず、人間の健康(浄化と強化)を追求したものという印象を受けます。このシンプルな体系化が、世界中で受入れられやすい要素にもつながっているように思います。
わたしはアシュタンガ・ヨガは死ぬまでにプライマリー・シリーズを全部やれるようになるだろうか…と思いながら練習しているのですが、「病気から護る」と言われると、やっぱり! と思います。ほんとうにガスが溜まりにくくなる実感があるし、鼻や喉が通るようになる感覚も毎回練習後に感じます。
アシュタンガ・ヨガが「むずかしそう」ということで敬遠するにはもったいない、綿密に体系立てられたシステムであることがこの本を読むとよくわかります。
▼ペーパーバック
▼Kindle版
ちょっと似たような表紙でややこしいのですが、ハーフ・プライマリーでもしんどい! でもアシュタンガ楽しい! という人には、過去に紹介した以下の本のほうがおすすめです。