CDがすでになにか別のものになっているというのはずいぶん前から感じていたけれど、ここ10年くらいのチャートとあわせて見せられると「ヒット」というのはずいぶん前から、個人の耳に残っているものの共有という面では幻想。この本では、それがありありと感じられる。
社会人になって20年以上経って、わたしは自分自身が集計もするような仕事をすることで初めて母数の定義まで見るようになったけれど、よく考えたらオリコンチャートだって、人と人との競争を見ている構図だったんですよね。
この本を読みながら、ヒットというのが不思議な言葉に見えてきました。「当たる」ってなんだろうと思うのだけど、いまは販売方法も活動フィールドも多様化している。「身近な人は誰も知らないけれど、数としては売れている」ということが、本当のところは関係者にしかわからない時代なのではないかな。
この本を読みながら、音楽の楽しみかたはライフステージや生活サイクルにすごく左右される、とあらためて思いました。
わたしは子どもの頃はテレビの刷り込みから入って、大学生になってからタワーレコードやHMVへ行ってとにかくかっこいいと感じるものを貪って、それがAmazonに移行して、いまはラジオで流れてきた曲を買うことがほとんどです。
耳中心なのか、それ以外にどの五感を組み合わせて使うのかということを振り返ってみると、耳だけでぐわっと引き込まれるものはやっぱり残っているんですよね。「恋は水色」や「オリーブの首飾り」は、いつでもかなりリアルに脳内再生されるし…。すごいなポール・モーリア。
……なんの話だっけ。
この本に書かれていることは音楽業界に限ってのことではないので、日本式の共感とかヒットというものがどんなふうに成り立っていたのか、そういうことに興味のある人におすすめです。
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