うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

神さまってなに? (14歳の世渡り術)  森達也 著


以前何冊か「よりみちパン!セ」シリーズの本(理論社あるいはイースト・プレス)を紹介したことがありますが、この河出書房新社の「14歳の世渡り術」もすばらしい。語りかけるような口調で書かれているので、自分は宗教オンチだと思っている人も、この本なら読了できるはず。

宗教は人を純粋化する。あるいは単純化する。

これは「利用される信仰心」という章で語られる一文。この要素が世界三大宗教の解説とともに展開するのですが、しっかり日本の歴史と紐付けられていて、いまとなってはそんなに宗教オンチでもないであろうわたしが読んでも、説明の流れのうまさに感動します。
これは14歳以上向けの設定の本。中学生の子どもがいる人も、まずは自分が読まねばなるまい。

日本の近代化を宗教的な視点から見れば、神さまが一方的に与えられたり奪われたり名乗ったり否定したりの歴史でもあったということになる。
(95ページ)

夏目漱石の「こころ」を読んで、あの時代からこんなにも人の心を分解して描いていた小説家の作品であっても、このような思考をする人物が主人公なのだよなぁ…と思ったことがある人は、読みながら頭の整理ができます。
なかでもとくに、116ページの「ちなみに選民思想は日本にもあった。」から続く説明のうまさには、痛みながらうなる感じで、いまもまったく根っこは変わっていないと感じるモヤモヤを抱えなおすことになる。抱えるというのは、こういう部分においてはとても大切なことだと思う。


キリスト教の説明の章にある以下の部分は、バガヴァッド・ギーターを読んでいる人には、ハッとするものではないかしら。

神の考えや決めたことは、人には絶対にわからない。だから、自分は選ばれているのだろうかなどと悩んでも仕方がない。自分はすでに選ばれていると考えて、選ばれたことを感謝しなさいとカルヴァンは主張した。
 カルヴァンの主張に賛同した信者たちは、与えられた職業を天職とみなして勤勉に働いた。ドイツ生まれの社会学者であるマックス・ウェーバーは後に、カルヴァンの予定説が資本主義経済の原型になったと考えた。もし仮にそうだとすれば、まさしく今の経済の基軸(基本的な)原理である資本主義経済は、キリスト教の影響によって生まれたということになる。
(146ページ)

わたしは、ハッとしました。いまの自分の生活は、キリスト教版のカルマ・ヨーガと資本主義社会との関係のなかにあって煽られてしまうなにかとの葛藤であって、だからこそ、バガヴァッド・ギーターのなかで説かれることがひっかかってくるのではないかと。
以前書いた「天職って? svadharma と svakarma」という葛藤にもつながる。


この本を読みながら「ヨーガを学びながらほかの世界の宗教を学ばずに傾倒することは、神風を信じたい気持ちをインド・テイストにしてるってだけのことではない?」と、わたしはいままでにインドで出会った日本人の知人たちに問いたかったけど、問うていないのだよなぁ。その理由は、わたしの日本人的な処世術により。というホンネとタテマエの整理ができました。
「インドの文化に精通した本格的なヨーガ講師」に純粋化、あるいは単純化されたいという願望を持っている人に、ぜひ読んで欲しいです。
これは神さまについて、自分で考えたい人むけの本です。めちゃくちゃおすすめです。