3年くらい前に買って気になる項目を楽しんで以後、たまに参考書のように開いています。
まったく堅苦しくなく、イラストがいっぱいの楽しい解説書。神話学を踏まえつつヨーガを学びたい人は、手元においておいたほうがよいです。
ちょうどいろいろな教典を英語で読み始めた頃に、この本を買いました。もともと日本語訳で読んでいた本をあとで英語&サンスクリット語版で読むと「日本語版にあったこんな言葉は、入ってないなぁ…」ということに気づいてモヤモヤするのですが、そういうモヤモヤも、この本にそっと「これは原本にはない」ということが書いてあったり。たいへん頼りになる参考書です。
教典や各派の思想のスタンスもわりと細かく触れられています。歴史も含めて学ぶ際にはずせない、ムガル帝国前後のインドとヨーガのことも、ヨーガ主体のトピックで扱われているのでたいへん読みやすいです。
このように。
じつは、スワーミ・○○アーナンダというのは、アクバル帝が応援したサニャーシー教団のグルに固有の名称である。ハタ・ヨーガを伝え、サニャーシーと敵対関係にあったヨーギー(ナータ派)の聖者は、○○ナータという名称になる。そして、ナータはヴェーダーンタではなく、タントラの徒である。奉じる哲学が異なれば、行うヨーガも違って当然だ。
(99ページ ラージャ・ヨーガ より)
同じ言葉でも定義が違うことがよくあるなかで、歴史や経緯抜きで違いを話すのって、不毛なんですよね。
以下は、まるでワイドショーの記事を読むように「エーッ☆」となりながら読みました。
アスラ族は、アーリヤに敵対した民族の採鉱・治金にかんする技術者集団であった。かれらの感嘆すべき技能──石を熱し、その灼熱の混沌のなかから、輝くばかりの金属を産み出す鍛冶の技術を、アーリヤ族は、
──恐ろしい魔力
として畏れた。征服者は、鍛冶職をカースト社会の外に置き、その魔力を封じようとしたのである。
じっさい、かれは鉱石を不変の金属に変える力を有する魔法使いであったし、サーンキヤ哲学の創始者カピラ仙とも深いかかわりを持つ。カピラ仙は、弟子であり妻ないしはそれに近い関係にあったアスラ族の女アースリーを、サーンキヤの後継者に選んだのである(『サーンキヤ綱要』)。
(533ページ プラナヴァ より)
アースリーって、女性だったのー! と。(カーリカーの第70節に名前が挙がっています)
上記は教派や学派に関するトピックだけど、ベーシックな項目もばっちり掘り下げられています。「ディヤーナ」の説明に「観想の基本(例としてサイババ)」は、おもしろすぎ…。
項目としては密教系の事項が多いので、神秘系の話題が好きな人の大好物コンテンツがいっぱいですが、ユーモアもいっぱい。
どうにもヘンテコなエピソードが素敵なイラストとともに、たくさん載っています。
▼この作家さんの本は、ほかにも何冊か紹介しています