上野のクレオパトラ展に行ってきました。いやぁ、おもしろかったぁ〜。
最後の最後に、すごい見どころが。先に書いちゃいますね。
アッキーレ・グリセンティという画家による1879年の作品「クレオパトラの死」というのがすごい。
ああ、こういう美的世界観が明治時代の知識人の間で共有されていたとしたら、夏目漱石の「虞美人草」のラストもあんなふうになるわ! と。圧倒的な説得材料を見せつけられたような気分になりました。
「クレオパトラの死」という絵画はいっとき西洋で流行ったのでしょうか。ものすごくたくさんの種類があるのですが、このいまトーハクに来ている絵はすごいです。布の描写や虎の敷物、毛の描写がリアル。実物を観たら感動しかない。
そもそも古代エジプトは、とにかく古い。リグ・ヴェーダのうんと前なんですよ。その時代のものが目の前にあって、しかもものすごいデザイン・造型で普通に存在しているという事態。なかでも、アクセサリーが美しい。上野の露店でいま売っている宝石の100倍グッドデザインなものばかり。色のセンスがいい。
ほかにも、思わずニヤニヤせずにいられないポイントがいくつかありましたが、目録の順番を添えて書くと
- 38:敵を打ち据えるメルエンプタハ王のレリーフ(前1213〜前1203年頃)
図案が完全に「DV中の男」で、虐待。なんですが、こういう姿を強さの象徴としてモチーフにしたものがあると。すごくプリミティブ。
- 60:ハエ型装飾付首飾(前1550〜前1292年頃)
すごく素敵なアクセサリーの、小さなモチーフが蝿(ハエ)。解説に「ハエはなにものにも向かっていく勇敢な存在として、武人に贈られるもののモチーフに用いられた」と。おもしろいなぁ。誰かれかまわず、顔に寄っていく。うんちにも寄っていく。うん、たしかに勇敢だ。
- 71:将軍サイシス(前1428〜前1397年頃)
- 137:神官の監督サテプイフウ(前1473〜前1458年頃)
ふたつとも体育座りのような「方形彫像」というものらしいのですが、「五右衛門風呂に入ったエジプト人」という様相がおかしくてしょうがない。
- 113:ホルスに授乳するイシス(前664〜前332年)
わきの下からブッダを出す摩耶夫人の10倍くらい洗練されてた。
- 172:アクティウムの海戦のレリーフ(前27〜前68年)
紀元前なのにすでにマンガ的な愉快さがある。「海の戦場を辻説法の絵のような感じでレリーフにしてみた」というようなおちゃめさ。
かわいらしい女性像も多く(女性の地位が高かったそうですよ)
- 41:テーベ市長アメンエムヘブとその妻と母(前1320〜前1270年頃)
シュープリームスのように3人くっついてる。なんか素敵。
- 62:若い女性(前1550〜前1292年頃)
これも、モータウンの女性みたいなかわいらしさ。
- 74:トゥティ婦人(前1388〜前1334年頃)
なんじゃろうなぁ。かわいいものはかわいいとしかいいようがない感じ。
まーとにかくいずれも、こんな時代にすでに?! という精度。
あと、古代エジプト人のみなさんはおしなべて「毛の量が多かったんだろうなぁ」と感じました。
古代からキレイなヘアアクセサリーがあって、あれは多毛を楽しむためだったとしか思えない。
▼この展示は9月23日(水)までです。
「クレオパトラとエジプトの王妃展」 上野の東京国立博物館 平成館 特別展示室