うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

藪の中 芥川龍之介 著


彼岸過迄」の構成がおもしろかったと読書仲間に話したら、お弟子さんのこの本を教えてくれました。読んだらすごかった。グルを超えている。
短編ミステリーであっという間に読み終わるのだけど、必ずや二度読むことになる。とんでもない作品ですねこりゃ。
人間を多角的に見ていく描き方が、殺人事件の聴き取り調査と殺された人のチャネリング。それぞれが自尊心のどの要素を軸に証言しているのか、真相よりも嘘の発動ポイントが圧倒的に気になる。


犯人とされる人物のひとりの、検非違使(けびいし:非違・非法を検察する役)に対するこのセリフが光る。

わたしは殺す時に、腰の太刀を使うのですが、あなた方は太刀は使わない、ただ権力で殺す、金で殺す、どうかするとおためごかしの言葉だけでも殺すでしょう。なるほど血は流れない、男は立派に生きている、――しかしそれでも殺したのです。罪の深さを考えて見れば、あなた方が悪いか、わたしが悪いか、どちらが悪いかわかりません。

これいま読むと、いろいろな実例が思い浮かぶ。思い浮かびすぎる。


ミステリーなので詳しく書けないのだけど、とにかくすごい短編小説。気になる人はぜひ読んでください。鳥肌モノの傑作です。


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(2012-09-27)