うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

気楽に殺ろうよ 藤子・F・不二雄 異色短編集


パラレル同窓会」「箱舟はいっぱい」と同じシリーズの短編集。この中に収められたものは「欲」と「執着」と「老い」について、想像を突き詰めるとたしかに……とハッとするものばかり。
「やすらぎの館」「サンプルAとB」「気楽に殺ろうよ」の3つはとにかく構成が練りに練られた内容で、じんわりグサーッとくる。
ネタバレし過ぎない程度に、プチ感想を書きます。

最後にほっこりする。


  • 大予言

短かすぎて余韻がないのがこわい。


オチが小さすぎてこわい。


  • 光陰

老人たちの話。


  • 幸運児

出産の話。


  • やすらぎの館

中年男性の覇権欲のやり場のなさのおとしどころって、こういうところにあるのかもしれない……。


  • 定年退食

「この年齢を超えたら年金・食糧・医療の保障を打ち切ります。それはわれわれの未来でもあります。じゃ、がんばって」という社会になる話。


  • サンプルAとB

絵は少女マンガ家の別の人が描いていて、ストーリーが藤子先生。ロミオとジュリエットを下敷きに人間の心と体のはたらきを仕様として分解・分析していく話。文章も絵も、とにかく構成がすごい。


  • 休日のガンマン

わりとドリフっぽい。


  • 分岐点

狂言自殺を繰り返す暗い妻に疲れた夫が、あの時もう一人の女と結婚していたら……。と人生の分岐点を思う話。


  • 換身

転校生の3人バージョンで、男の子と女の子とオッサンで入れ替わる。


  • 気楽に殺ろうよ

食欲が恥ずべきものとなり、性欲がその逆でオープンに。価値観がいろいろ極端な方向へスイッチしただけという世界。


最近の犯罪のニュースを見ていると、この世界かも……と思うような人格の人が出てくる。



我欲のままに生きていけばこうなるでしょ。ということをまざまざと描いたものばかり。
人間の自分都合な部分って、想像はしてもここまで具体的に詰めないよね、ということが思いきり可視化されています。
自分で決めて自分の足で歩く、ちゃんとした大人になろう、老人になろう、という気になります。70歳を超えた人には刺激が強すぎるかも。