日本人がヨガを学び始めると、身近に感じることになる空海さん。同行二人って、そういうこと?!(ちがうか)
空海さんという人は、知れば知るほどドツボにハマります。求道者で、書家で、作家で、翻訳家で建築家。神秘家だから温泉まで見つけちゃう、ってことになっちゃってる。
肉体が強靭で真面目な人格に、地頭としてアップルコンピュータを入れちゃうとこうなっちゃうよ、というような人。
ヨガを学ぶようになってからは、仏教の人というよりも、「インド六派哲学をひとりで包括しまくりじゃないか!」と思うようになりました。空海さんラブな気持ちで学びを深めていくだけで、これけっこうヨガですよ、と思います。
空海さんゆかりの地を訪ねる旅もたくさんしているのですが、ピックアップしきれないので本だけ紹介します。
読んだ日付順(上のほうが新しい紹介)に並べました。
なにか空海の本を読んでみたい、というときの参考にしてみてください。
▼紙の本
▼Kindle版
(感想)空海「即身成仏義」「声字実相義」「吽字義」 加藤精一(編)
空海さんのサンスクリットの理解の粒度とその変換センスに驚きます。「言語」の説明を読むと、しっかり「空海式流出論的一元論」とでもいうような思想が確立されています。
▼紙の本
▼Kindle版
(感想)空海「般若心経秘鍵」 加藤精一(編)
いま玄奘訳として読まれている般若心経が、空海さんの時代は鳩摩羅什訳として読まれていたようです。そんな歴史の発見のほか、空海さんによる人生相談の回答的書簡の訳など、空海さんの生への情熱がぎゅっと詰まったような解説本。
▼紙の本
▼Kindle版
(感想)空海「秘蔵宝鑰」 こころの底を知る手引き 加藤純隆・加藤精一 翻訳
これを読むと、漢訳で仏教やインド哲学を学んでいた空海さんの感覚がびしびし伝わってきます。今はインド人が英訳したものを読める時代ですが、平安時代にここまでインド思想を広く網羅して学んでいたことに驚きます。
▼紙の本
▼Kindle版
空海さんが、若き日に書いたエンタメ小説。5人による対話討論形式で、その説法劇を追いながら儒教も道教も仏教も学べてしまう、まるで福袋のような構成! 訳のまろやかさの効果もあり、ふつうにすごくおもしろい。
▼紙の本
▼Kindle版
空海さんて、あのエロス全開の時代の人なんだよねというスタンスを1ミリもずらさずに語り続ける内容がたまりません。「オレ的にはこう見るぞ」という説が炸裂ですが、勢いがあります。
空海さんがウパニシャッドに出てくるようなことをおっしゃっている! と、にんまりしながら読めるありがたいお言葉集。励まされながら学ぶインド哲学なんだけど、ディスカヴァー・トゥエンティワンの本なので自己啓発書としてもよくまとまっています。
「性霊集」でハタ・ヨーガの古典に繋がる教えやナチュロパシー理論を、「般若心経秘鍵」でヴェーダーンタの教えを説く空海さんの「ひとりインド六派哲学」っぷりが垣間見える一冊。
ヴェーダーンタもサーンキヤもヨーガも、日本人なら空海さんひとりですんでしまう、ということがわかってしまうびっくりな一冊。「私が密教に魅かれるのは、密教が世界の差異というものに好意的であるからである。」という著者さんの言葉も名言。
タイトルで空海さんが打ち出されていますが、事実上ブッダよね、という本でした。良寛さんの「ことばについての戒め」が刺さる。仏教式アドバイス本、という感じでした。
ロックな男としての空海さんを描いている、男目線のあこがれたっぷりの一冊。思う存分「空海さんのカッコよさ」を堪能したいとき、そんな話題で飲みたいときに話し相手がいない人におすすめ。
空海さんのすごさのひとつ「計算力と編集力」に建築目線から切り込んでいくおもしろい本。初心者向きではないけど、エンジニア向きというか、システマチックに俯瞰思考する空海ファンにおすすめ。
「最澄とのすれちがい」まで図解されているおもしろい本。「即身成仏義」の冒頭部分の訳もいいかんじで、入門書としておすすめ。
写真集。赤い光の、地獄アレンジ風味「空也像」がみどころです。それ空海関係ないよね、という気になる仏像もたくさん登場します。これを見て観光する寺を決めるのは楽しいと思う。
編集の専門家が空海密教を紐解くとこうなるか! という、おもしろすぎる一冊。
CD付の修行本。宿坊の朝のお勤めでいろんな種類のマントラがどばばばーっと唱えられるのを聴くときに、これで勉強しておくと「あ、あれは薬師如来だ」なというふうにわかるようになります。なってどうするってもんでもないのですが。
子供向けのマンガ本なのに、最澄さんとの別れの理由をちゃんと描いていたりする。あなどれない一冊。
空海さんの民間の中での仕事、エンジニアとしての側面にスポットをあてて書かれた本。これを読むと、さらに惚れることになります。役行者の「橋」・行基の「道」に続く、空海の「塔」。この辺の話題が好きな人におすすめ。
今になって引用箇所を読み直すと、「瑜伽行唯識は真言密教よりも古く、インド語ではハタ・ヨーガとアヴィアンカの組み合わせ」など、ありがたい整理がされている。ヴァジロリー・ムドラーと理趣経は関連付ける根拠がわたしのなかでしっかりないので、これはこれで自分で調べようとか、いろいろ後になって読み直してみても刺激になる一冊。
このとき空海はこのように考えていたのでは? ああだったのでは? こうだったのでは? と、楽しくなる。旅に出たくなります。
請来目録の訳があるエピソードの箇所が好き。中国から帰国したとき、日本の天皇を中心とした権威社会に密教の感覚を伝えるのは、すごく大変なことであっただろうと思うので。
空海伝として魅力的な一冊。勉強家の空海さんの側面を多く描いている内容です。空海さんという人物の魅力を知るための入門書、という感じ。仏教全体も包括して、ということだと「図解雑学 空海」のほうがいいかな。
最澄さんの話とあわせて、密教の歴史を時間軸で学べる。年表つき。ほかにもたくさんの僧侶のエピソードが絡み合うので、仏教史本として読めます。
日本仏教には、大きくいって二つの流れ(「即身成仏」「来世的生命主義」)があったと思う。という説明がよい。空海さんのほか、「親鸞と日蓮、その関係と違い」など、魅力的な章が並びます。
空海密教とジュニャーナ・ヨーガとの相似性についての記述があります。ヨガの人が仏教を学んでいく流れとして、とてもわかりやすい本。おすすめ。