ヨガ友のダンナさんがサーファーで、その家の本棚から借りてきた一冊。
この本に収められているのは、ビートルズがインドへ行った頃より少し前の時代の話。8人の伝説エピソード。サーフィンとアートと音楽とドラッグ・カルチャーがクロスする。副題に「男達」とあるけれど、女性(キャシー・コーナー)も登場します。
■1章:デール・ベルジー
■2章:フィル・エドワーズ
■3章:ジョン・シーバーソン
■4章:マイク・ドイル
■5章:ロン・ストナー
■6章:キャシー・コーナー
■7章:ホビー・アルター
■8章:デューイ・ウェーバー
印象に残ったのは、こんなエピソード。
■画家で映画監督のジョン・シーバーソンが、作品の仲買人ゴードン・マックルランドを介して、ジミヘンのレコード・ジャケットを手がけていたリック・グリフィンと知り合い、「SURFER」という雑誌が生まれ、そのなかでロン・ストナーがカメラマンをつとめた話。
■「SURFER」に自分のアシスタントが雇われたことにがっかりしたストナーが、のちにドラッグ中毒(LSD)に陥り失踪する話。
■コンテストでもビジネスでも成功したデューイ・ウェーバーがのちにアルコール依存症になる話。
■映画「ギジット」のモデルとなったキャシー・コーナーの話。
サーフィンについてはあまりしっかり書いてこなかったのだけど、うちこも少しだけ経験があります。
サーフィンの場合は波待ちというのがあって、ずーっと従欲混合な時間。乗ることだけではなく、全般に精神修行のようなところがある。いく時はさっとやるところも似ているし、押す側・押される側の感覚などもヨガっぽいものではある。
そして、ことさらにスピリチュアルな展開にすることができてしまうところも似ている。
たとえば、こんなふうに。
<マイク・ドイルの章より>
彼は今でも毎日のようにサーフィンをしている。朝、半日海で過ごし、残りの半日、アトリエにこもり、ドアの鍵をかけ、服を脱ぎ捨て、音楽を大音量でかけ、いよいよキャンバスと向き合うのだ。
「気持ちがすぐれなければ、キャンバスに何かを表現することはできないだろ? 私はいつも、海で刺激を受け、海で自分を洗い流す。サーフィンをした後は本当に気持ちがいい。運動すると疲れるどころか、より力が湧いてくる。サーフィンしながら海で酸素を蓄え、資源、つまりはスピリチュアルなものと触れ合い、その後でこのアトリエに戻って、海からもらったエネルギーを今度はキャンバスへぶつけるんだ。真っ青な海、木の緑、自然が生み出す鮮やかな色彩に私は刺激される。
排気ガスで覆われたロサンゼルスの灰色の空の下では、どうあがいてもこうした色彩感覚は生まれてこない。東京に住む人達も実に気の毒だなぁ」
その排気ガスも灰色の空も、自然の一部なんだよなぁ。「修行」「癒し」「自然の力」というキーワードともに、都会や人間関係のあれこれが否定される話の展開になったりすると、「ああそこもヨガとよく似ているね」と思ったりする。
以下は逆に、よい共通性。
<ロン・ストナーの章より>
それまでサーファー達にとって、浜にやってくるカメラマンといえば、ロクに彼らのことを理解しようともしない異人種だった。しかし、ストナーは違っていた。当時ストナーと一緒に写真の仕事をしたことのあるハービー・フレッチャーは語る。
「ロンは、自分からサーファー達に溶け込んで写真を撮ろうとした。サーフィンのことを本当によく知っていたよ。サーフィンのテクニックとマインドの両方をね。だから、ロンとは同じゴールに向かって仕事をしている気分がした」
「やらなきゃわからないから、やる」の気持ち。
のちにドラッグ中毒に陥ってしまう人なので、そういう中毒性というところも似ているのだろうな。
「サージェント・ペパー」も「ペット・サウンズ」もいいよね、というヨギのかたには面白く読めそう。
この時代は濃いね。