読者のくわくまさんからいただきました。佐保田先生が生きておられたら生誕100年にあたる年に作られた冊子だそうです。市販の本ではないのですが、この冊子に書いてあることは過去に紹介した「ヨーガ禅道話」「続ヨーガ禅道話」「静坐のすすめ（紹介は全5回）」「般若心経の真実」でその背景を読み取ることができます。いずれも名著なので参考にしてください。
今日紹介するのは、「法語抄」のなかでグッときたものたち。
日本ヨガ界のベスト・ジャージスト博士（勝手に認定）のありがたいお言葉です。
体操の効果と、呼吸法の効果と、それから心を動かさない統一していく効果と、これは禅のやり方です。そういう三つをただ集めた効果ではなく、掛け合わせた効果です。その中で一番大事な要素は気で、呼吸で養われる神経のエネルギーです。それを体操が助ける。心の統一のし方がそれを助けるというふうにして、この三つがお互い相乗して掛け合うんですね。ここにヨーガの秘密があります。
「集めた効果ではなく、掛け合わせた効果」。
これは、私だけの経験じゃない。私と一緒にヨーガをやった人の経験でもあるんですが、ヨーガをやっていますとね、不思議なことに人間の性質が宗教的になるんですねえ。人間そのものが健康になるから、病気が "治る"んじゃなくて、"なくなる" んですよ。
あっても、なくなるんですよね。一部になっちゃうから。
腹が立ったら叱らない。叱る時は腹が立たんときに。
佐保田先生も思うところあってこの短いセンテンスが生まれたかと思うと、修行は長い道のりだ。
ヨーガの正しい毎日の練習が善い結果を生んだという理由を合理的に追求すると、環境の世界は自分の心源から瞬間ごとに発現してゆくのだという考え方がよりよく納得することができましょう。ヨーガは単に肉体だけの操作ではなく精神の操作と深くつながっており、精神面の無意識層における変化が外界経験をも変えてゆくのだと考えれば、外界の運命的変化も守護神たちの好意の恵みも合理的に理解できそうで、ヨーガ神秘性を強調する必要はないでしょう。
そう。ヨガの神秘性は、別段強調すべきところなんてなにもないと思う。他のスポーツや芸事でも同じ事があるだろうし。
いろいろな体操をするのは主として背骨をまっすぐに伸ばし呼吸を静かにゆっくりするためなんです。
それも、四方八方からアプローチする。これが、ヨガの「（いい意味で）暇で総合的」なところだと思う。まじで暇だったと思うんですよね。開発した人。師匠に「昔のインドの暇な人たちが一生懸命考えてくれたの。僕たちは忙しいでしょ。だからね、いいから、やんなさい」って言われて気がついた。
「ハタ・ヨーガというのは人間の主としての体の神秘性を明らかにしようとした努力である」と。もちろん心を離れた体はあり得ないのですから、体を扱おうとすると心と結びついた体を扱うわけです。心を離してしまって体を扱ったって死体を扱っただけのことです。死体解剖と同じです。そんなものを研究したって役立たない。心と結びついたものを体の面から調べる、そこに神秘があり秘密がある。それを明らかにしようとしたのがハタ・ヨーガです。
「心はおちてても体は元気」だったりすることで、心が体に元気づけられたりすることもある。見えないからって、心のことだけ神秘的に扱うのもヘンな話なんですよね。
ヨーガでは霊格が高くなることを尊ぶんであって、霊力が強くなるということはむしろ卑しむんです。
うまいこというなぁ。
私はここでみなさんに申し上げたいのは、幸福な運命が開けてくるか、暗い運命が開けてくるかは自業自得なんだということです。しかし先ず、自業自得ということから第一に考えないといけないことは、われわれは、自分の心の持ち方を積極的に保たなくてはいけないということなんです。心を消極的に持っては駄目ということです。
天風さんも沖さんもシヴァナンダさんもいうとる。
何でも「外が悪い、外が悪い」と言って外の方へ責任をかぶせる、そういう考え方の人ばっかりおる社会というものは、私は非常に不愉快な、非常に悪い事のたくさんある嫌な社会だと思うんですね。で、「これは俺の責任だ、俺の責任だ」と言っている人がたくさんおった、そういう社会の方がいい社会で、愉快な社会、楽しい社会が出来るんじゃないかと思いますね。
佐保田先生もこういうことを言いたくなることがある世の中で生きていたんだよなぁ、と、当たり前のことなのだけど、今こういう言葉を読むとそんなことを強く感じる。それまであまり「不愉快」といった言葉を使わない人という印象があったので、とても人間味を感じたし、心の支えになる言葉でした。
うちこももし80歳まで生きたら、佐保田先生に負けないくらいジャージが似合うヨギになるんだ。
