うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界― 清水克行 著

先日、オンライン会議が始まる前の雑談中に、教養があるっていいなと思うことがありました。
コロナは終わらないし地震は起こるし戦争まで勃発して、、、なんて世間話をしているときに、「もうそろそろまた年号変えなくちゃだね」とおっしゃるかたがいて、「えー!なんでですか?」とお尋ねしたら、昔は時代がリセットされた感を出すために年号を変えていたとお話をしてくださり、場がなごみました。


この本を読んだらその話が出てきて、鎌倉時代の約150年間で年号は48回変わっていて、単純計算でならすと3年に1回ペースなのだそう。さらに「私年号」なんてものを作るケースもあって・・・と、昔の話がおもしろい。

 

教養があると、視点を変えることができていいですね。教養がないと自分の狭い想像の中で意識をこねくり回すから、狭い範囲で共通の知り合いのうわさ話ばかりしている、なんてことになりかねない。先日の職場の人の軽妙なトーク力を見て、そんなことをあらためて思いました。

そういう意味で、この本はメリットだらけ。なんだかついつい人に話したくなるようなお話がいっぱいです。

 

 

なかでもわたしには、日本史で習う「倭寇」以前の、もっとひどくて大胆な国際詐欺の紹介が興味深すぎて。その手口は、まるでインドで旅行者が遭う詐欺のような図々しさ! 

しかも朝鮮側はそれにうすうす気づきながら、100年以上波風を立てないように遇してくれていたそうです。

『朝鮮王朝実録』によれば、朝鮮の官人たちは「ヘンに刺激して倭人たちが暴れると面倒だから、ここは穏当に対応しよう」と述べており、明らかにそれとわかりながらも、ことを荒立てることを避けていた様子である。
(ゴースト・オブ・ツシマ より)

わたしは秀吉の朝鮮出兵について、これまで「なんで?」と唐突な出来事に思えていたのですが、その前に歴史としてこういうことがあったのだとしたら、この流れからであれば、ああなるほどと思う。

 

ほかにも、住所でよく見る「大字」は江戸時代の村の領域を受け継いでいると考えていいとか、日常に役立つ歴史トピックがいっぱいです。
昔のエピソードって、「それは伝説ではなく大事件ですが!」と思うようなものが多いですよね。わたしは両国橋東側で読んだ ”お駒” という女性がストーキングにあって殺された話や、宮崎県で見た「ままこ滝」の話とか、強く記憶している話がいくつかあるのですが、この本を読むと、その時代ごとに人の命の価値が違っていたことがわかります。

 


わたしが行ったことのある新潟県の神社も出てきました。

新潟県十日町市の松苧神社には、大般若経 全巻を読破したという超マジメ坊主が「大方様恋しやなう」と、熟女未亡人への届かぬ思いを綴った落書きや、「まだ一度も抱き申さず候」と童貞卒業を祈願した若者の落書きがわずかにあるが、おおむね男性同士の恋愛願望の落書きが多数を占めている。
(エロ落書き より)

よりによって、こういうネタで(笑)。

思わぬ展開から松苧神社のエピソードを知ってしまいましたが、それを抜きにしてもここはおすすめスポットです!

 

ほかにも人身売買の話や浮気への報復の話、計量計測の単位の話など、その時代の考えかたがわかりやすく書かれています。とにかく楽しい。
この本は全般、以下の視点が貫かれています。

「正義」の反対は「悪」ではない。「正義」の反対には「もう一つの正義」が存在していたのである。
(人買いの「正義」 より)


いまこういう本が売れているというのは、妙に納得。多くの人が心根のどこかで、まるで前世記憶を見るかのように懐かしむ考え方が書かれています。

歴史学者は、祟りで「さわると頭が悪くなる」という石もメジャーで計測しなければならないとか、クスクス笑える話もいっぱい。

おもしろい先生!