うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

深い河 ディープ・リバー 遠藤周作 著

信じる対象を持っていると、信じる対象を求めているけれど認めたくない人を加虐的な気持ちにさせてしまう。信じる対象を持つ人の矛盾を引っ張り出して可視化して、その偽善性を示したいという気持ちを刺激してしまう。
「いじめられるほうにも原因がある」という時、わたしはこの意味において、確かにそうだろうと思っている。いじめられる原因は自分にあったと確信しているし、信じるということは、そういうことだ。わかろうとしてくれない人には不気味に見えてしまうということだ。
でもそれが交わることもある。たぶんそれが「理解」というやつで、それにはとても時間がかかるし、労力もかかる。


この小説はその時間と労力をかけた人々の話で、なかでも「加虐的な気持ちはなぜ起こるのか」を説明するかのように結びつけられた二人の関係性に引き込まれ、暇な時間のすべてを一気に吸い取られるように、貪るように読みました。


この小説を読むきっかけは7年ほど前に、職場で話した女性との会話がきっかけでした。GWはどこかへ行くんですか? なんてよくある雑談から過去に行ったことのある国の話になって、わたしがインドへ行ったことがあると話したらとても意外だと驚かれて、彼女がこの『深い河』の話をしてくれました。
彼女は、自分は行ってみようと思わないのだけど、この小説をずっと覚えていて、実際に行ったことがある人に会うといろいろ聞きたくなるのだそうです。タワーマンションに住み、DINKSで犬を飼い、ワインを探求するのが楽しみ……という絵に描いたような都会のバリキャリOLさんの心の奥にそんな楔を打ち込むとはどんな小説なのかと、その頃とても気になったのを今でも覚えていました。
その『深い河』を、先日古本屋で入手しました。この本の話を聞いた当時はあまり小説を読まなかったので、きっと説教くさかったりするのだろうと勝手にイメージしていました。


それがなんと、読みはじめてみたら意外とドラマっぽい。どんどん先に進んでしまいます。罪悪感に訴えかけて人をコントロールしようとするやり方には騙されないから!あたしそういうのは見破っちゃうんだから!と思いながら本を読むような、ねじれたわたしの先入観を軽々と超えていく。
そしてときどき本を閉じては、神について考えたりしてしまう。
神というのは「その秘密は、お・あ・ず・け」と、死ぬまでその「お・あ・ず・け」を引っ張ってくれるような、そんな存在じゃないか。でもこの本には終わりがある。だからまたすぐ走り出したい。終わりが知りたい。うーんでもせっかくこんな考えが湧いたのだから、ここはひとつ立ち止まって考えてみたい。でも読んじゃう! この繰り返し。

 


そして最後まで読んでみて、この本を読むきっかけをくれた人の心に打たれた楔の太さが、わたしにもわかったような気がしました。当時から本を読んでいれば、彼女ともっと有意義な話ができたかもしれない。
表面的な人間関係に始終していると、こういうところを見落としてしまう。