この本を買った日のことを、ものすごくよく覚えています。
翌日に25年ぶりに同級生に会う約束をしていて、その友人の住む県の本屋さんで買いました。急に年齢を意識したのでしょう。たぶん、いろんなことを訊かれるだろうなと。
立ち読みの段階で「大丈夫。頑張ろう」と思える現実的な励ましの言葉がたくさんあって、一泊二日の旅の間に最後まで読んでしまいました。
その後もずっとデスクに置いていて、これからやろうと思うことの頭の整理をやさしく助けてくれる。
この本に書かれていることは、信用がものを言うということ。それをマイルドな語り口で、漠然と寄りかかり先を探している人に対しては少し厳しいトーンで書かれています。
この本の「信用がある人の10カ条」の最後に「潔さがある」「感謝と畏れの感覚がある」が並んでいるのその順番が、まあ中年に刺さること刺さること。
何箇所も付箋を貼りましたが、なかでもここは、この本と一緒に旅をした二日間とシンクロする内容で印象に残っています。
生きる楽しみや目的を自分で見いだせないままこれから先の数十年を生きるのは、たとえAIがどれほど発達しても、決してラクなことではないでしょう。
人づきあいも同様で、離れていてもすぐにつながるSNSの便利さから遠ざかってみると、いかに自分が、自分の人生とは関係のない他者、つまり「世間」からの見栄えや評判を気にして生きてしまっているかがわかるはずです。
「友あり、遠方より来る」の方がよっぽど喜びが大きいというのに。
(第4章 「面倒なこと」に時間をかける贅沢を より)
この部分を帰りの乗り物のなかで読んで、涙が出てきました。
その旅の間じゅう、友人たちが「来てくれてありがとう。すごくうれしい。たのしい」と言ってくれたときの、同じことを何度も思わず口にする側の気持ちになったから。
行くことが難しかったのではなくて、わたしたちを隔てていたのは距離でも忙しさでもなく、わたしたちと関係のない「世間」だった。
この旅の思い出とともに、この本は手放せないものになりました。
あのとき買って、読んでよかった。
「HIBARI BOOKS」で買いました。