後半にいくにつれヨガの本のように感じられ、道徳経からの引用以降はタオとインターネットの共通点を語るオードリーさんの語りが興味深くて一気に読んでしまいました。
道徳経のすてきな日本語訳がこれまた良くて。元の英訳がとっても詩的みたい。いろんな現代版の訳があるけれどこのバージョンが気に入っています、というものが紹介されていました。
「信仰を持つのではなく、信仰を持つ状態になるようにする」という章は、特定の人格神を崇めないヨーガの思想の解説テキストのような内容でした。あまりにすばらしいので手帳に書き写しました。
「批判的思考とは否定することではない」という章にあった以下の語りは、わたしが小説や物語を読めるようになった理由を言語化されているように見えました。
いわゆる「批判的思考」とは、相手の主張や間違いを見つけて批判することではなく、「それが正しいとしたら、どのような条件下で正しいのか」という問いかけをすることです。
物語に没入する行為は「それが正しいとしたら、どのような条件下で正しいのか」のシミュレーションになります。だから読書には価値がある。
わたしはたまに読書会を開催するのだけど、そのときの本の選定基準になっているのはまさにこの意味での批判的思考を愛のある形で導き出してくれるもの。これは名作の基準とも言える気がします。
ほかにも、誰かを出し抜こうとする人や秘密を抱えている人と関わらないようにする方法など官僚ならではの対人的な工夫まで開示されていて、こうやって根本的な内面の優先順位をオープンにしていくことで環境を更新し続けるスタンスが伝わってくる本でした。