うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

(再読)シャンデリア 川上未映子 著

少し前に同じ著者の『黄色い家』を読み、この短編がまた読みたくなって再読しました。貧しい子供時代を送った40代女性のお金の話というところが共通しています。

『黄色い家』を読んでからこの『シャンデリア』を読むと、自分の意識が初回の読書と大きく変わって、ここに書かれていることが “自分にもあるバグ” に見えてきます。

他者へ向けたこの思考、モノローグは危ない。危なすぎる。

 

 

主人公はひとりで生きている46歳の中年女性です。

彼女には突然入り始めた収入があります。『黄色い家』の世界とは違う、まともな世界の仕事をした報酬ではあったのだけど、目的があって稼いだわけではありません。

いまは金銭感覚のあう友達もいないみたい。

貧しい家に育ち疎遠になっていた唯一の家族も亡くなり、ひとりで生きています。

 

 

デパートへ出かければ店員やほかの金持ち客とフレンドリーに会話はできる。けれどもそれは、フレンド「リー」。

この「リー」を見つめると病む。なのに「リー」を確かめたいのか、主人公は急に積極的に他者に話しかけ、その性急さゆえに自滅していきます。"関係" の渇望の物語に見えてくる。

『黄色い家』を読んだ後だったので「だからそこはそんなふうに観察しちゃだめなんだ」という視点になれたけど、初回の読書ではこの視点に至りませんでした。

 

 

同じ本を時間をおいて読んでみると、以前読んだときの自分の認知の傾向が見えてきます。初回は、いとも簡単に調子に乗る金持ち老夫人へ向けられた行為に驚きながら、わたしもちょっとスカッとしていたのです。

だけどあらためて読んでみたら、そういう話じゃなかった。びっくりしました。

 

 

 

▼この本に収録されています