離欲について考えています。この本を読んでしまったからです。インドの教えに触れると毎回この角度から自我のありようを見つめるべく追い込まれますが、それにしてもたいそう楽しい読書時間でした。
この小説のような、こういうのは今では二次創作というのかな。谷崎潤一郎「ハッサン・カンの妖術」の登場人物と同じインド人が出てきます。おおむね同じ話。なのにぜんぜん違う。
おおむね同じなのに、ぜんぜん違うのです。
芥川龍之介の「魔術」もインド人から妖術を習う物語。それを子どもでも読めるように書かれた感じなのですが、ものすごい江戸川乱歩感です。わくわくします。そしてオチがこれまたドヨーンとおもしろい。
ほんらい谷崎潤一郎のほうが変態という点において圧倒的に江戸川乱歩に近いはずなのに、芥川龍之介版のほうが乱歩っぽいというのはこれいかに。まるで職人芸。
谷崎潤一郎バージョンは妖術の先生が物質主義社会と精神主義世界の間でボヤきながら語る自己の前提がおもしろくもあり、その時代の人間の揺れや危うさをうかがい知れて勉強になるのですが、この芥川龍之介バージョンはそこからめんどうな社会的主張を丁寧にとり除きつつ、でもエゴのありようについての示唆はしっかり残しています。ものすごいアレンジ技術。
両方読むととんでもなくおもしろいです。これ単体でもかなりおもしろいです。
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