軽い気持ちで読み始めたらおもしろくて数日で読んでしまいました。わたしはこの本のタイトルの元ネタとして有名な「深夜特急」を読んだことがありません。
旅行記は世の中にたくさんあるけれど、やっぱりインドは理不尽な出来事がたくさん起こるからおもしろい。人を信じて後悔し、人を疑ってさらに後悔する。そのくり返し。「学習する」って、なんだ? 人間同士のやりとりにおいて「学習」なんてあるのか? わたしはインドへ行くたびにそんなことを考えるのだけど、この旅行記を読みながらまたその感覚を思い出しました。
この著者はバイクで東インド(コルカタ)から南端まで下ってデリーへ北上し、そこからパキスタンへ入っていきます。
わくわくすること、どきどきすること、身構えること、怒ること、信じること、距離をとること、いずれにしてもそうするしかないことの連続のなかで、ネガティブな思考に引っ張られないように自分を奮い立たせながら先へ進んでいく過程がかっこいい。
「別れ」に慣れて強くなっていく自分に気がつくときの感覚など細かい心の筋肉の記憶がよみがえる瞬間が幾度もあって、沁みる。思わぬ拾い物をしたような気分。