うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インド染織の旅 安藤武子 著

70年代、80年代のインドの様子がわかるインド旅行記。古本屋でたまたま目にし、載っている写真のなつかしい雰囲気に惹かれて買いました。
今はもう多くの場所が近代化されているのだろうけど、いつか行ってみたいと思う場所がたくさんありました。染織物を訪ねていく旅行記なので有名な観光遺跡はほんの少し。工房や工場や職人の家、染織りの町の様子、そして旅のトラブルが紹介されています。
わたしは数年前に西インドの刺繍の村へ行ったことがあるのですが、そこは今でもまた行きたいと思う場所です。日本の8倍の国土がある大きな国なので、最近は旅行記もテーマがあるものを参考にしています。

 

この旅行記はかなり昔なので、遭遇しているエピソードのインパクトもなかなか。
タクシーに約束した額を払わなかった外国人が運転手に刺され、空港にいるバスもタクシーも運転手が一斉に団結して職場放棄をしている場面に出くわしたり、強盗が信号機を壊して汽車が動かなかった、なんてことが書かれています。こんな感じで。

 インドールからは、ボパールへ出て、また汽車を乗りつぐ事になる。ボパールは例のアメリカ資本の会社の毒ガス漏れの被害のあったところだが、その一年前、危い所を通ったものである。
 この時は汽車が五時間半おくれ、夜の駅の待合室の寒かったこと、次第に駅のコーヒー売りも居なくなって、人気ないインドの夜の駅は恐いようである。聞くところによれば、強盗が出て信号機を壊してしまって、汽車が動けないという。デカン高原の裾の平野には強盗が出没するというが、頭領は女だという。山が深くて警察もなかなか手を出せないというのが実情らしい。
(77ページ 北部インド より)

ちょうど伝記やインドの盗賊史を読んだばかりだったので、プーラン・デーヴィーを想起しました。ヴィクラムが殺されて頭領になっているのが80年代なので、時代的には重なります。

 

この旅行記は手書きの地図や見取り図がいい感じで、本当にメモ帳をそのまま載せたような感じ。いろんな工房や路上での作業の様子も写真で見ることができます。
道中あちこちで予定変更やトラブルを経験され、「次々に打つ手を考えて旅を続けるしかないのがこの国の旅の仕方」と書かれていましたが、当時はかなり大変だっただろうと想像します。ムスリムをモスレムと表記していたり、耳で得た知識という感じがありありと感じられるのも、昔の旅行記ならでは。
読んでいたらまた西インドへ行きたくなりました。いつか行けたらいいな。

 

インド染織の旅

インド染織の旅

  • 作者:安藤 武子
  • 発売日: 1988/08/13
  • メディア: 単行本