うちこのヨガ日記

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ヨガ呼吸・冥想百科 ― ハタヨガによる生活の開眼 B.K.S. アイアンガー 著 / 沖正弘(監訳)


現在「ヨガ呼吸・瞑想百科―200の写真で見るプラーナーヤーマの極意」という名前で増補版が出ている本の、昔のバージョンです。写真は1985年に出た初版で、「ハタヨガの真髄」を紹介したのと同じ頃から参照している本として手元にあるのですが、登場する教典があまりに多いので、せめて半分くらいは引用元の本も読んでから紹介しようと思っているうちに10年たってしまいました。

この本はさまざまな教典の解釈がときどき織り込まれる形で進んでいきます。
時代感のあるカタカナ記述ですが、何箇所か以下を引き合いに出しながら書かれています。

  • バガバド・ギーター(参考
  • ラーマーヤナ
  • ウッタラ・カンダ(ラーマーヤナの続編)
  • ヨーガ・スートラ(参考
  • チャラカ・サムヒター(参考
  • ウパニシャド(参考
  • カトパニシャド(参考
  • プラシュノパニシャド(参考
  • チャーンドギョパニシャド(参考
  • カウシタキ・ウパニシャド(参考
  • タイッティリーヨパニシャド(参考
  • ヴァラーホパニシャド
  • シュヴェータシュヴァタロパニシャド(参考
  • マハーナーラヤノパニシャド
  • ヨガ・チューダマニ・ウパニシャド
  • ハタヨガ・プラディーピカー(参考
  • ゲランダ・サムヒター(参考
  • シヴァ・サムヒター(参考
  • シャット・チャクラ・ニルーパナ
  • シヴァ・スヴァロダヤ

ウパニシャッドの旧式リエゾン表記がたまりません。ほかにも「ターントラの経典によると〜」「ヨガの経典によると〜」というふうに書かれている箇所もあり、多くの教典が参照されています。


この本は呼吸法と瞑想の説明が細かくされていますが、ときにヨーガ・スートラと紐付けて書かれており、アイアンガー先生の解釈なので、この先生はこのように解釈されているのか…というふうに読むこともできます。
以下のような書かれ方は、バガヴァッド・ギーターを実践に落とし込むかのようで、とても魅力的。

記憶は実践の進歩と洗練のために使えばよき友となるが、考えこんだり過去の体験を繰り返したりすると障害となる。一回ごとに進歩するよう心がけること。
(2 プラーナーヤーマの基本/10 コツと注意 脳 より)

まるで6章5節のよう!(お手持ちのギーターを開いてご参加ください)


・・・かと思えば、同じ項目の中に、こんなことも記載されています。

年少者はクムバカをしてはいけない。一六〜一八歳で始めなさい。それ以前に行うと、顔が永久に老けてしまう場合がある。

永久に老けるって! ハタ・ヨーガ・プラディピカーも「16歳の青年のように若返る」みたいなトーンなのでこれはこれでそれらしい書かれかたなのだけど、日本語で読むとじわじわきます。



そしてこの本が出た当時もオウム真理教のあとも、この話に吸い寄せられる人はずっといるんだよな…と思う、こんな記述もありました。

バストゥリカーによって、クンダリーニの力が覚醒されるというまちがった考えをしている人が多い。権威ある書物にも同じようなことが書かれてあるが、真実とはほど遠いものである。
(3 プラーナーヤーマの実践/23 バストゥリカーとカパーラバーティ より)

わたしがヨガクラスでたまにモニョモニョした話しかたをするのは、なんかそういうのが好きな人もいるからなんですの。(もにょり。)



ひとつ、アヌローマ(いわゆる方鼻呼吸)の説明文章の中に、少ない文字数でよく要約された<効果>の説明文を見つけました。

自分の中で何が起こっているかを意識できるようになり、集中力が身につく。

自分の中で起こっている転変に惑わされることが集中を妨げるものだということに気づけるのは、呼吸法の練習の中にある大きな技術的効用と思います。



以下はヨガニードラの説明として書かれている箇所ではないのですが、前半はまさにサンカルパを唱えることの説明にもなるので紹介します。

鍛錬されていない心は、目的をもたず、あらゆる方向に散ってしまう。冥想の実践はそのような心に安定をもたらし、より完全な知識へと導く。そして心と知性は意志の力で導かれ、チームワークをよくとるのである。考えと言葉、行為が一致してくる。静められた心と知性は、単純、潔白と悟りで、風のないところにおいたランプのように光るのである。
(4 ディヤーナとシャヴァアーサナ/29 ディヤーナ 冥想 より)

「意志の力で導かれるチームワーク」のために、唱えています。



4種の意識の状態の説明も、現代の人にはちょっと直接的な日本語に感じますが、このように解説されています。

ヨガでは、意識には四つの主要な状態があると教えている。それらは、熟睡あるいは精神的無知の状態(スシュプティ)、ぼうっとして怠慢な状態(スヴァプナー)、注意深く、意識が覚醒している状態(ジャーグルタ)の三つであり、そして四番目の状態は、求道者が精神的に輝く(ツリーヤ)という状態である。この状態は時間と空間を超えた「永遠の存在」とよばれることもあるし、また創造主と魂が一体になる状態ともいう。この状態はシャヴァアーサナを完全に行じたとき、つまり身体が、熟眠しているときのように休み、感覚は夢を見ているときのようであるが、知性は鋭く目覚めているときに経験できる。しかし、このうおうにシャヴァアーサナを完璧に行えることはめったにない。完璧にシャヴァアーサナができた場合は、求道者は生まれ変わり、解放される。
(4 ディヤーナとシャヴァアーサナ/30 シャヴァアーサナ 意識の段階 より)

熟睡位、夢眠位、覚醒位、第四位の説明です。


この本はいろいろ日本語に古めかしいところはありつつ、シャヴァーサナの方法の説明の中に「コンタクトレンズをはずす」とあり、一瞬「おおっ」と思いましたが、よく考えるとこれはハードレンズしかない時代? いろいろ脳内で時代感を補正しながら読みました。



初版は帯を外すと「PRANAYAMA DIPIKA」というタイトル。プラーナーヤーマの灯→プラーナーヤーマの極意。増補版のほうが、もともとのタイトルに近いように思います。冥想も、瞑想になっています。
(冥想と瞑想の書き分けについては、夏目漱石の小説を読みながら学ぶとおもしろいですよ!)


▼本に歴史ありだわぁ(古い順)


ヨガ呼吸・瞑想百科
ヨガ呼吸・瞑想百科
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B.K.S. アイアンガー
白揚社