うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著 / 小尾芙佐 (翻訳)


リアルタイムでベストセラーだった頃からずっと気になりつつ、文庫を入手してからも出だしの文章になじめず挫折を繰り返していた本。
年末の掃除をきっかけに読み始め、ゆっくりじっくり読み終えました。なるほどこういうわけですね。そして、かなり後をひきますね。あらすじは思いっきり背表紙に書いてあって、わかっているのに過程がすごい。
さまざまな意識の中でもこういう感覚の起こるメインの部位は、たぶん筋肉で言うなら大殿筋。何回も何回もスクワットが続いて途中からはもうしんどいことがあたりまえになってきて麻痺してきて、読み終えたら見事にドスーンと重く沈む。そして人間の感情というのはこんなふうに、具体的に質量を持つ重いものだったのだよな…と気づく。そんなこころの筋肉痛。

効率だの有意義だのと「知」を追いかける車輪が回りはじめてとまらない、そういうことはわたしの日常の中でもたくさんあって、だからといって "ダメなわたし" が他人から愛されている瞬間にも差別感情を受け取る気持ち悪さは確実に存在していて、どっちにしても苦しくて。
さまざまな苦しみのなかでも、こんなにも混み入った状態をよくも設定し、ともに振り返らせてくれるとは、なんという小説でしょう。
以下の部分で、わたしは完全にこの世界に呑みこまれたと思いました。

 人々が私を笑いものにしていたことを知ったのはつい最近のことだ。それなのに、知らぬ間に私は私自身を笑っている連中の仲間に加わっていた。そのことが何よりも私を傷つけた。

こんなふうに、わたしも自分で自分を傷つけている。
勉強になったとか反省したとかグッときたとか撃沈したとかヤられたとかいいながら、反応を外部に示しながら、自分自身を外から笑うかのような、こんな感情の合理化。自分自身をも「効率的に」「合理的に」処理してしまおうとする、あの存在のおそろしさ。
これは感動とか言っていられないくらいおそろしい小説だと思うのだけど、感動作っぽい扱いですね。みなさんメンタルお強いのね…。