うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

愛の夢とか 川上未映子 著


短編集ですが、なかでも長めの作品に引き込まれました。
二度読んだのは「お花畑自身」という物語。社長夫人の50代主婦が30代の独身女性に脳内で毒づくのだけど、毒づかれている女性は自分でめちゃくちゃ稼ぐ自立型の成功者。これはタイトルの設定も含めて途中で「おおっ…」となる。


「いちご畑が永遠につづいてゆくのだから」は、いちご、そこで登場?! というのがまたすごくよいのだけど、復讐したいような気持ちを抱きながら男性と生活する女性の、こんな日常の振り返りが妙にしっくりくる。

わたしはどうしていつも自分で自分を置き去りにして、すぐにそれを迎えにゆくような恥かしい真似を飽きもせずにこうしてくりかえすことができるのだろう。

「あ”あ”あ”ーーーーっ」って、なにかがフラッシュバックする。でも具体的には思い出せない。でも経験のあるこの感じ。



以下は「愛の夢とか」にある主婦の昼下がりの描写。主婦でなくても「うわーっ」となる。

午後の二時。洗濯物をとりこんで掃除機のコードをぬいて買い物にでるまでのみんながいちばん暇な時間。あんたにだけは用がないと離れたところからひそひそと笑われているようなそんな時間。思い出とか想像とかうわさ話とかありとあらゆる手持ちの材料を総動員して妄想をふくらましても、それがうまくふくらんでいるのかもわからないそんな時間。

わたしは暇だと気が狂いそうになるので、こういう描写を読むとひっぱられてしまう。

「お花畑自身」は太宰治の「貨幣」みたいな視点でありつつ、女性には「貨幣」よりも今どきの感じがしてリアル。かなりおもしろいです。


川上未映子さんのほかの本の感想はこちら