うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

その手をにぎりたい 柚木麻子 著


バブル全盛期の不動産業者と高級鮨店が舞台。
途中、食の話と性愛の描写が重なって不快な感覚を持つ場面があったけど、エンタメ小説として読後感がものすごく安定している。この作家さんはわたしよりも若いのに、よくここまでリアルな雰囲気で書くもんだなと驚いた。
わたしもバブルの頃はよくわからないのだけど、年上の職場の先輩のタクシー帰りの頻度にはその習慣の名残を感じたりすることがあり、そんなに遠くない話に感じられた。
この作家さんは、女性の脳内トークがいつもリアルだ。たとえば、好きな男性のことを思いながらも両想いでない場合を想定したこんな脳内つぶやき(読む前に話がわかってしまわないように名前はアルファベットで書きます)

 そもそも、Aさんとどうにかなりたいわけでもない。Bさんという恋人候補がいるのが何よりの証拠だ。立場はちゃんとわきまえている。まだ恥など掻いていない。疎まれているわけがない。

こういう、主体的に先回りして言いわけする感じを、少ない文字数でさっと挟む。
わたしなら絶対にこの人がいいのに! という人と恋をする展開にならないところにジェネレーションギャップを感じるのも楽しく、休日にざーっと読むとリラックスできて、軽やかな充実感が得られる。
お話を設計するのがうまいなぁ。プロだわぁ。