うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

瀬戸内寂聴×藤原新也「生きること、死ぬこと」(紀伊國屋サザンセミナー)


6月に『若き日に薔薇を摘め』刊行記念対談を聞いてきました。
河出書房新社紀伊國屋の共催イベントなのですが、「レイム・ディアー」「ブッダの方舟」の河出書房、すごいカード切ってきたわ〜という組み合わせ。
「90過ぎのばーさんと70過ぎのじーさん(ご本人たち談)」の語る死生観。会場は笑いあふれるひととき。なんでこんなに楽しい場になるのだ。


ワインレッドのシャツと白いスーツでダンディに登場する写真家の藤原氏。その後を追って寂聴氏がスススーッと山吹色の僧衣で登場。寂聴氏は中に別の人が入っているのではないか? と思うほどの頭の回転の速さで、ファシリテーションも本人が行なう流れに(笑)。
出版社のかたがさっと言い出しにくい書籍のPR、Q&Aへの進行切り替えも寂聴氏のスーパー・リードでサクサク進む。寂聴氏「あたしったら、つい、癖で仕切っちゃってる?」という雰囲気で会場が明るくなる。ゆったりしてるようで、やっぱりせっかち! なサービス精神大放出。
対談は始終、やさしい物書きのお姉さんが、ビジュアルと感性で生きているやんちゃな青年から言葉を引き出す、という構図。人の関係というのは、歳を重ねてもあまり役割は変わらないみたい。
対談の中で、寂聴氏がものすごく自然に「あなたはいろいろなことをするのに、なんで小説書かないの? 小説がいちばん面白いのに。なんでなんでー?」と少女のようなトーンだったのがとても印象的でした。




導入で、「老い」とは何かと問う、出版社の司会者さん。

  • 恋と革命ね!(寂聴氏)
  • 行動して出会うこと。出会わなくなったら老いたということ。藤原氏

藤原氏の言葉は、「うのちヨギ(宇野千代さん)みたいなこと言うなぁ」と思うフレーズが多かった。
1時間半の間に多くの言葉が飛び出したけれど、二人の死生観に共通するキーワードは「変化とともにある」ということ。


藤原氏の発言は、完全にインド哲学家。

  • 理想の死を想った瞬間に、それに反する理想でない死が生まれてしまう。
  • 抽象的な議論には意味がない。都度そのときの状況で成り立っているから。

と。
延命医術についての質問には、「猫に延命治療はするかい?」というところから切り込んでいく。
「エネルギーは出し惜しみしちゃダメ」「次の予定を作らない」などのさりげない言葉に、人間の悩みの根源への問いが込められている。




最後のQ&Aの寂聴ワールドは期待を裏切らず、痛快でした!(不動のクオリティ)
お墓の考え方についての質問があったのだけど、最終的に自分のとこのお墓のPRで締めていた。これがお手ごろ価格で、みんな入りたそうにしており、もはや質疑応答芸の域(笑)。
その後、「ユーモアこそが、教養だから」とお二人で締めくくられました。



よく、「いまを生きろ」というけれど、このお二人の対談をききながら、わたしのなかでじわじわと
「いまのことを考えて自分を律することと、先のことを考えて気を枯らすことは違うことなんだよ」
というメッセージが浮かび上がってきました。



そんな素敵な組み合わせのお二人の書簡でできた本はこちら。