うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ハタ・ヨーガ・プラディピカー 英語版では左道密教部分を語っていなかった


ヨーガの古典について外国人ヨギさんたちと話す機会がありました。
題材に「ハタ・ヨーガ・プラディピカー」が出てきたので、3章の大楽思想はきっと紛糾するだろうなぁと思っていたら、「Hatha Yoga Pradipika」のPancham Sinh氏訳英語版(PDFはこちら)は密教の左道的な部分がカットされている。ふうむ。カットしているのかぁ。


その点、日本語版は正直です。佐保田先生が解説付きで訳してくれています。

<以下、Pancham Sinh氏英語版でカットされている部分>
(「ヨーガ根本教典佐保田鶴治 より)

■三・九八

〔ヨーギニー〕男子が適正な行法を巧みに行なってビンドゥを回収した時、婦人がヴァジローリーをもってラジャスを保全するならば、彼女はヨーギニー(女行者)である。


■三・九九
彼女のラジャスは、疑いもなく、いささかも失われない。その時、彼女のカラダのなかで、ナーダの音はビンドゥ(空点)に合一する。


■三・一○○
〔ヴァジローリーの効果〕男性のビンドゥと女性のラジャスは、ヴァジローリーの行によって、自己のカラダのなかで合一して、あらゆるシッディ(霊力)を与える。


■三・一○一
婦人が自分のラジャスを回収して、それを保全するならば、彼女はヨーギニーである。彼女は必ずや過去と未来を知り、空中を歩むことができるであろう。


■三・一○二
ヴァジローリー行の修習によって肉体のシッディを得る。この結構なヨーガは、享楽を味わうなかで解脱を与えるのである。

佐保田先生は

  • ここでいうビンドゥは婦人が性交的歓喜にひたる忘我の心境。
  • ここはいわゆる仏教でいう大楽思想、つまり左道密教の思想。

と、さくっと解説を入れています。
フェミニズム? なにそれ? これ古典だよ」ってとこなんでしょうか。




この流れは以下の節句がキックオフなんだけれども

■三・八四
この行法を修するには、常人には得難い二つの必要条件がある。その一つは牛乳であり、他の一つは従順な婦人である。

英語版は、なんとここを抜き忘れている。「常人では得がたい(difficult to get for the ordinary people)」が入っているから抜かなくてもよいと判断したのかな。


抜き忘れているにしてもすごい文章です。

Two things are necessary for this, and these are difficult to get for the ordinary people ── (1)milk and (2)a woman behaving, as desired.

ヴァジローリー以前にもサジハジョーリーってとこで女性のお役目が出てくるので、その修行(?)に従順な婦人が必要でないこともないんだけど、にしてもこれ、英語版ではこの節もカットしたほうがよくまとまるような気がします。



いずれにしても、なんというか、、、
急にお客さんが来たからって、あわててお片づけした家族みたいです!
かわいらしい隠し漏れだけど、隠すならまるっと隠しておけばいいのにと思います。



【参考書】

ヨーガ根本教典
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佐保田 鶴治
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