諸般のご縁で、しばらくのあいだ岩手県にいました。盛岡市内には少し詳しくなったかな。
旅のマドンナさんがいるのでなかなか土地勘がつかないのですが、「ここは、いい」と思う場所が随時データベース化されています。
盛岡には、長崎に似たディープさがあります。昭和です。
旅先で古本屋を見るとつい立ち寄ってしまうのですが、街なかの「イースト21」という建物の中にある「キリン書房」が、かなりよかった。
古本屋さんへはけっこう行くので、「その本屋の著者構成比」を目でスキャン&解析する。このお店は、
- なぜ? と思うほど、「ひろさちや」がとても多い。岩手出身じゃないのに。
- 期待を裏切らず「瀬戸内寂聴」も。天台寺のある岩手ですものね。
- 「荒俣宏」「梅原猛」といった顔ぶれがしっかりあるわりに「夢枕獏」は少なく感じた。
- うのちヨギ、バナーナンダ構成比に比べ、「五木寛之」の構成比が低い。低すぎる。
- 「内田樹」「なだいなだ」「加藤諦三」が少ない。この少なさから、この三氏は東京っぽい消費なのかなと思ったりした。
(あくまで、うちこが定常的にチェックする人名比較です)
売れてしまったのかなとか、まとめ売りした人がいるのかなとか、そういう妄想をしながらその土地に住む読書好きの人とわたしは趣味が合うかしら、なんて気持ちでスキャンするのですが、この本屋さんに通う人とはとても趣味が合いそうです。
長崎ではキリスト教の本が多かったり、盛岡では囲碁の本が多かったり、そういう土地柄も古本屋で妄想するのもひとつの楽しみです。
盛岡市は、道を歩いているとおかしな看板や情景が多すぎるのだけど、
なにげなく道路の反対側から発せられる楽しそうな気配に目を向けたら
どちらも、いますぐ参加したい気分になった。この書体の訴求力は、レッドビッキーズを想起させる。
こんなのは序の口すぎるくらい、盛岡は奔放な街。それはいずれまた書くことにする。
盛岡に到着した日はとても寒かった。
マドンナさんが「なに食べたい?」と聞いてくれたので、「あたたかいもの」「昭和」という二つのワードを投げてみたら、ここへ連れて行ってくれた。
麺類食堂「橋一」野球好きの店主なのかな、という雑書ラインナップのたまらない店。
昭和30年代の値段のメニューがディスプレイされていました。「ヂュース」「中華もり」。
「昭和」のキーワードをここまでドンズバで拾うデータベースをお持ちの案内人の力量に驚く。
盛岡の街を歩いていると、昭和の精霊たちが「昭和好きの人が来た。気をひいてみよう。うふふ」といってわたしを弄んでいるのではないかと思うくらい、あちこちに目を奪われた先が、どうにもヘンだ。
盛岡の読書好きのかたには、「キリン書房」にぜひ行ってみてほしいな。わたしの価値観ではなかなかトンがった、都心に引けをとらない品揃えだった。
「一日この本屋で並べ替え作業をしたい。もちろん趣味で」と思う、素敵な本屋さんでした。