うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インド人は自然の持つ「モード」を定義した

guna
アーユルヴェーダを学んでいる人にはなじみ深い単語の「グナ」。
「無いという状態がある」というゼロの定義のほかに、インド人すごいわと思うのが、この三つのグナという「性質」の定義。まったくどうにも細かい分解大国です。
今日は手元にあったシュリー・オーロビンド先生の英語テキストの巻末の用語集の助けを借ります。テキストがいくつかあるので、複数バージョンを併記します。


グナを英訳すると

  • mode of Nature.
  • fundamental qualities or modes of Nature.

オーロビンド先生のテキストは長い文だとしんどいのだけど、端的な言い換えがわかりやすい。詩人ではなく、学者さんぽい。


それぞれは、このように説明されていました。
Sattva(Sattwa) サットヴァ。日本語だと「純性」と訳されることが多い。

  • that illumines and clarifies ; the mode of light and poise and peace.
  • the principle of light and harmony in Nature.

「illumine」と「clarify」と「poise」が近しくあるうえでの「harmony」


Rajas ラジャス。日本語だと「激性」と訳されることが多い。

  • that energizes and drives to action ; the mode of action , desire and passion.
  • the kinetic principle in Nature characterised by desire , action and passion.

燃える感じをまず想起するけど、動的な感じがポイントかも。


Tamas タマス。日本語だと「鈍性」と訳されることが多い。

  • the quality of ignorance and inertia.
  • the principle of obscurity and inertia in Nature.

quality of〜、principle of〜。性質として、ある要素としての惰性。


日本語では純性・激性・鈍性なと訳されることが多いですが、サンスクリット語からの英文訳をみると「和える」「動かす」「とどまらせる」というニュアンスのほうがしっくりいく。
日本は四季があるから、これを身体に反映して感じやすい。
自分の心のなかがゴチャついているときは、「和える(Sattva)」成分が薄くなっている。
心の問題を語るときに、この成分分解単語が認識されていると、ぐっと理解しやすくなる。心理学本よりもインド哲学のほうが腑に落ちるのは、ここに依る要素が大きいと思うんです。


なんでも分解して組み直しちゃうのが上手なインド人。数学が得意でITにもすんなり馴染んじゃう。
よくインド人は頭の構造が違うとかいうけれど、それは「圧倒的な分解力=観察力」にあると思います。
「とりあえず音が鳴ったら踊っちゃう」のも、「とりあえず唱えちゃう」のも、音の持つ性質や力、モードを血のレベルで理解しているからなんじゃないかな。スパイスを見分ける感度も。


日本人はもともと「恥の概念」が独特だから、Sattva(Sattwa) を叩き込まれているようなところがある。わざわざ定義しなくても当たり前だろ、という躾レベルの「わきまえ」。震災時の日本人の行動を見て、美化されて語られたりすることもあった、よい面でもあること。和の心、和の精神。
これが実は性質的にタマシックな和だったりするから、ちょっとややこしい。「illumine」と「clarify」と「poise」が近しくあるうえでの「harmony in Nature」ではなくて、「harmony in 便宜的な人間関係の世界」。それぞれの生命力を分かち合うイメージが、そこには湧かない。
この国でバランスを取りながら生きていくには、独特の技術がいるみたい。
「harmony in "ゴキブリさんと並列の、ひとつのいきものとしての人間同士"」という意識で Sattva をとらえると、「人に迷惑をかけない」という教えにももう少し粒度がでてくるように思います。「人に迷惑をかけない=タマス」になると、まわらない。
「みんなで力を合わせて助け合うラジャス」が、機械的な悪者探しに起因すると、もともとの希望の存在がかすんで見えなくなる。



考えすぎる前に、まずはもう少し自然に踊ったり唱えたりできる国になるとよいね。
そういうところは、インドに限らず、諸外国から学びたい。


▼おまけ(過去のオーロビンド先生関連)
聖師と呼ばれる人の傾聴、分解技術
Patala(夢の種)
Loveについて。オーロビンド先生の3つの回答


「The Ideal of The Karmayogin」
紹介1回目
紹介2回目
紹介3回目