うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

高野聖(こうやひじり) シネマ歌舞伎

uchikoyoga2012-03-31
ナマ歌舞伎は観たことがないのですが、はじめて「シネマ歌舞伎」を観てきました。映画館で歌舞伎をみせるという試み。
2008年に歌舞伎座で演じられた泉鏡花原作の「高野聖」は、タイトルのとおり高野のかおり満載のストーリー。


これは、観るべし。です。けっこう広範囲な都道府県で観ることができます。(上映映画館
ネタバレしない範囲で書くのがむずかしいのですが、「大義名分」という煩悩の愚かさについて、こんな表現のしかたがあったかと。インド人もビックリの、そんな恐ろしい作品です。



女形の演技と声
・ななめ下ドリシュティと涙袋と桜色メイクの効用
・ある伏線についての考察
・黒子をつかったナマの演出
・この短時間で集中的に観客を巻き込む構成



印象に残る。残りすぎる。絵的には、つげ義春の「ねじ式」っぽい世界。
おもに三人の役者さんによって展開されるのですが、なにせ原作に込められたメッセージがよい。
コンセプトは「小説を読んだあとと同じようななにかを感じられるものを」ということらしいのですが、実際、映像なのに「読了感」がある。
原作が1900年の作品で、文体も独特。実際読んだらここまでズシーンと響いてくるか、わたしにはこのシネマ歌舞伎なみに作品を文字で感じる自信がありません。


ちなみに、うちこ的には
ヒルの大きさがスタンド・バイ・ミーの3倍くらいで迫力があったこと」「中村獅童のふくらはぎの形と、少しぽっちゃりした感じが役に合っててよかった。あれがシャープな体型だと煩悩の葛藤が薄れる」というのが引き込まれポイントだったのですが、これは少々濃すぎる観察だったようです。
せっかくなので、この感想を見てから観に行く人は、そこも見どころにしてみてください。


パンフレットに
「信仰心篤い若い僧と、魔性と聖性の二面性を持つ女とのやりとりから、恐ろしくも美しい世界が描き出されます。」
とあるとおり、まさにそれに尽きる。
坂東玉三郎とその夫役の怪演、中村歌六の説法の余韻が止まらない。久しぶりに時間を忘れる90分を過ごしました。