うちこのヨガ日記

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インド式すごい勉強法 ニヤンタ・デシュパンデ 著

インド式すごい勉強法
気軽に大きな字の本をばっくり読みたい気分で、ひょいと手にとって買って読んでみたらすばらしかった。著者は日本で在日インド人学校を経営しているニヤンタ・デシュパンデ氏。
いわゆるノウハウ本かと思いきや、解説はヴェーダの口伝にまでさかのぼっています。インドの教育とその背景を通じてインドを知ることができる。しかも気軽に。インドを理解しようとして難しい本を手にとる前に、この本を読んでみることをおすすめします。
小学校の教師の仕事をしている人が読んだら、涙が出ちゃうかも。


本文での太字は引用内でも太字にしておきます。

<122ページ 集中力のコツ ─「今、目の前のことだけ考える」より>
 インドの哲学は、私が日本のみなさんに伝えたい、「インドの本当の顔」です。
 インド哲学からいえば、「集中すること」とは「現在のこの瞬間にいる」ということなのです。

あるがまま、です。

<46ページ 「声を出す」から脳が刺激される! より> 
インドの九九はリズム感のある語呂合わせによって、親から子へ、その子が親になって次の世代の子どもへと口伝されています。インドの文化は、口伝の発達した文化なのです。
 インドでは、紙のない時代、「ヴェーダ聖典」というものがありました。この聖典は現在の百科事典のようなものです。大昔のインドの知恵の数々がたくさんつまっています。
 この知恵は口伝で師から弟子へと伝えられたのです。「ヴェーダ聖典」は百科事典ですから、内容は多岐にわたっています。とうてい一人では覚えきれません。このため、弟子ごとに内容を分けました。それぞれに別の内容を暗唱させていったのです。
 弟子は、その弟子に知恵を伝承し、またその弟子は……といった具合に代々伝承したのです。このように、インドでは数千年にわたって口伝の文化があったのです。

先日習った空手もそうだったけど、最近「やはり口伝だ、ライブだ。」と思うことが多い。メモなんかできない、身体を動かしながら学ぶ場面でもそう思う。

<105ページ 「できる人のマネ」ができる人が成功する! より>
 耳というのはインプット装置ですから、耳がすぐれていれば、脳も自然ときたえられることになるわけです。インドでは古くから『リグ・ヴェーダ』など、師匠から弟子に語り継ぐ「ヴェーダ聖典」があります。このような口伝文化の伝統が、インプット重視の勉強法に反映されているのかもしれません。
 また、かつてインドに「グルクル」といった厳格なボーディングスクール(住み込みで教える学校)がありました。グルクルではエリートを養成するための口伝を中心とした講義が行われていました。



(関連して)



<110ページ 「人生最高の師」を見つける方法 より>
 かつてのインドの厳格なボーディングスクール「グルクル」。その語源は「グル」。日本語で言えば「師匠」です。
 2章でインド哲学の「知恵の道」の話をしました。人類が知っている知識をこえた「秘密の知識」にどのようにたどりつくか、これが人生最大の目的です。
 そこで大事になってくるのが「グル」なのです。
 普通の知識ならどの先生でも教えられますが、それをこえる知識、秘密知識となると、グルの存在を待たなくてはならないいのです。
 しかし、心配はいりません。グルはめったに会えませんが、必ず会うことができる存在です。「心待ちにしていれば必ず出会えるものだ」とインドでは伝えられています。
 ただ、グルと出会っても、その時点ではその先生がグルだとはわかりません。秘密知識を得たあとで、この先生がグルだったことに気が付くというのです。
 グルの存在は偉大です。
 ですから、素晴らしい知識を得たからといって、おごってはいけないのです。これは、「他人の手助けがあってはじめて成功する」という、自分への戒めの教えでもあります。
「グル」というと、怪しい宗教のように思われるかもしれませんが、「コーチ」「メンター」(よき助言者)といったような意味です。

「それをこえる知識、秘密知識」となると、本人が学ぶ力がベースになるから、そうなる。すごく単純なことなのだけど、「よい師にめぐりあえたら学びたい」という逆ストーリーを思い描く人がとても多いね。

<132ページ 頭がいい人は「まず原因と結果を説明する」より>
 インドは多民族国家で、人口も10億をこえる国です。そこでは自己主張をしないと生きていけない土壌があります。
 また、自分ではあたり前のことであっても、宗教や人種も違う相手にとっては、まったく知らないことは珍しくありません。このため、会話の内容のひとつひとつを「知っているか」、「賛成か、反対か」など、相手とコミュニケーションをとって明らかにしていかないといけないのです。
 インドでは、「人と違っていてあたり前」です。
 人間はそれぞれ、まったく別の個性や考えかたがある。だからこそ、コミュニケーションをして相手の個性や考え方を理解するというわけです。
 自分の考えていることを明らかにして、相手とコミュニケーションする ─ これをオープンアンドフェア・マインドといいます。
「すべてをオープンかつフェアに判断する」という意味です。

インドでは値段があってないような交渉をしないと先に進まないことが多く、「どうだ(この値段なら払う気があるか)?」というやり取りも即レスでバンバンやっていかないと、いちいち意図を読んでいると疲れます。
そのたびに、実は読んでいるのは「相手の出かた」ではなく「自分の納得ライン」や「自分のその気」であることに気づく。そのくらいバンバン確認する。相手は「ぼったくろう」と思っているのではなく、「貰えるだけ貰いたい」というだけだから。これに慣れると、日本のやりとりがかえってまどろっこしくなったり、値段が決まっていることが少しつまらなく感じたりする。

<157ページ 親が率先して「先生を尊敬する」習慣 より>
 日本人の先生たちと話してみると、先生たちが少しかわいそうになります。
 というのも、みなさんの尊敬が足りないように感じるからです。
 インドでは教師の社会的地位がとても高く、みんなから尊敬される存在なのです。
 だから、先生の言うことを聞かない生徒なんていません。生徒の親もめったなことがなければ、先生を批判などしません。
 これは非常に大事な点です。
 たとえば、家で親が先生の悪口を言っていたとしたら、子どもは先生を尊敬しなくなります。尊敬していない先生の授業で子どもの学力がつくでしょうか。

教師が変態扱いされるようなニュース報道のああいうノリは、海外にもあるのだろうか。日本は少しそういう「叩く」文化の色合いが強いのではないかと思ったりする。



学校の先生が発言や行動にリスクヘッジをしすぎると、「大人になってからも思い出す師」は減っていくだろうな。学校以外の門を叩かないと、そういう学びは得にくくなっているね。
「学ぶのはあなた。わたしはそのアドバイスします」というのは文字にすると正しいのだけど、実際のところ「学ぶのはあなた自身ですから、成功や満足をわたしのせいにしないでくださいね」というニュアンスが強すぎると、「それはグルではないよね」という気がしたりする。
たぶん実績と尊敬が「情報」として先に入ってくる流れになると、そうなる。


 「評判は悪いけどいいグルよぉ。わたしにはね」


という弟子が何人いるか。これがグルの力量かもしれないなぁ。
指導というものについて、いろいろな角度から考えさせてくれる一冊でした。

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