古本屋でなんとなく買いました。
1974年の古い本なのですが、インド由来のことや中国でのとらえられかたなど、人気に関係なくフラットで、とてもよい説明スタンス。過去に読んだ仏像解説本に比べて空海さんに言及する解説が多かったので、きゃっきゃと楽しく読めました。
そして「好きなタイプ」の写真も多く……。
好きなタイプってのは、あれです。脳内でふきだしに入れるコメントのバリエーションが無限大なもの。楽しい写真は引用紹介の後で。
<23ページ 悟りのかたちは無限にひろがる 阿閃如来 より>
この如来は左手で袈裟のはしを握った姿をとり、仏道修行に励む者の心の障害を除き強固な意志を与える。空海は、即身成仏の修行をたすけるのに適切な如来として金剛峯寺の講堂の本尊として安置したが、その性格から一般の対象にはならなかったし、全寺の本尊とした例もみられない。
実際見る仏像は、ちょっとお風呂上りにバスタオルをつまんでいるような、なんともいえない雰囲気があったりしますが、ヨギには心強い如来さまですね。
<51ページ 薬師如来 ── 現世利益のほとけ より>
仏教本来の理想からいえば、現世において利益があるとする信仰は大衆を教化するための方便から出発したもので、成立年代もおそく、教理全体の体系のなかでも重要な位置を占めていない。
「なんとかしてくれるなら、祈りますよ」という大衆のための方便。わりきって安っぽく仕上げなければいけないプレゼン業務を行なう際は「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」と唱えてから行こう!
<91ページ 観世音菩薩 ── 慈悲と力 より>
空海が入唐するとき、航海する船に現れて荒れ狂う風波をしずめたという船中湧現観音とよばれる観音があり、和歌山県の竜光院に平安時代後期の画像が伝わっている。
このお寺の中にある塔見たさに、高野山ではいつも横を通るのだけど、この絵については知らなかった。
<97ページ 虚空蔵菩薩と地蔵菩薩 ── 天と地の恵み 知恵を守るための求聞持法 より>
涯しなくつづく大草原や重畳なる山岳のなかに住む人たちにとって、星、月、太陽の運行についての知識は生きるために絶対欠くことのできないものであった。天体の運行を読みとることによって、迷わずに旅することができるのも天の与える恩恵であれば、暖かな陽光、作物をうるおす雨やさわやかな風も天の恩恵である。それらすべてのものをつかさどるのが虚空蔵菩薩である。いわば、空間を把握すべく考え出された理論的性格が強い菩薩である。
虚空蔵菩薩の信仰を日本に最初にもたらしたのは道慈律師で、養老二年(七一八)のことであった。道慈が伝えたのは虚空蔵求聞持法といって、特殊な修法を行なうものであった。すなわち、東南西の開けた場所を選び、そこで虚空蔵菩薩の陀羅尼(呪文)を百万べん唱えると頭脳明晰になるというのである。偉大な自然科学者でもあるといわれる空海もこの法を受け、室戸岬などで修法を行なっておりそれによって大自然の法則を悟ったのである。虚空蔵菩薩が知恵を与えるほとけとされているのはこの法によってである。
そんなに宇宙っぽい菩薩とは知りませんでした。うちこは自分の干支に対応する菩薩であることもあり、この虚空蔵菩薩さんが大好きです。
<122ページ 仏法を守る武神たち 聖なる河に住む神・弁才天 より>
水の少ないインドでは、大河は聖なる河、神の住む河である。弁才天(弁天)はサラスヴァティという河の神で、インドでも盛んに信仰された。
知っておくと、ちょっと観光が楽しくなるよ。
仏像については、雑誌を買うよりも古本屋さんで見つけやすいハンドブックを買うほうがよいと思います。ハンディなほうが、あとあと脳内でフキダシを入れて遊びやすいんで。