今年のGWは暇だった。
数日間ずつ群馬と千葉へ少し出かけた。千葉のほうはワーケーションみたいなのって実際どうなんだろうとチャレンジしてみる、パソコンを持っての移動。ビジネスホテルを予約して外房の2つの海街に泊まった。
そのほかにもGWはけっこう日にちがあったはずなのに、暇だからといってミニ講座を発案しそのために本を数冊読み直し、気がつくと5時間も資料作成に没頭していた。GW後半はあっという間に過ぎてしまった。
そんな幻のようなGWに、踏んだり蹴ったりの夜があった。
その日は港町に泊まった。夕食をとりに駅の近くの食堂へ入ったら相席しかなく、地元の人と楽しく話しながら食事をした。そこで、女性が一人で旅をしているというだけでありがちな展開になった。食事を済ませてわりとすぐに「わたしはこの辺で。いろいろ教えてくださり、ありがとうございました」と店を出た。
ひとりの年配の女性が暴走した。同じテーブルの男性をつかまえて、わたしの観光案内をする流れがいいじゃないか、明日は二人で出かけなさいよ、それしかないじゃないのとゴリ押ししたい気持ちを止められなくなってしまって、しょうがないからわたしが早々に店を出る形で強制終了した。途中までは楽しかった。
わたしはこういう機会に遭遇したことが、けっこうある。
というか、このテの話が多いのはわたしのひとり旅の特徴といえるかもしれない。
旅はオープン・マインドの練習試合のようなものと思っているから。逃げないから。ただ打席に立っただけ。頭のなかで素振りばかりしていると狂うから打席に立ちに行く。
海外旅行が練習試合、国内旅行が市内の学校の対抗試合みたいな感じで、本番の試合は日常のほうにある。新しい組織に入るときなどがそれだ。
その港町の食堂を出た夜は、ホテルでベッドに入ったらプーンと蚊がやってきて、何ヶ所も刺された。今夜は生きるエネルギーと関わりまくる夜だと思った。
眠れない。さて困ったと思いながら、この世に蚊除けアプリなるものがあることを知った。早速ダウンロードしてスマホをベッドサイドに置いてみたら、その周波数を嫌ったのか、蚊がブックスタンドのライトのほうへヨロヨロ移動してきて、弱っていたところを捕獲した。
殺生をした。その腹のなかにあったわたしの血が、手のひらに広がった。